はじめに総括
特記事項
2023年度の株式会社LITALICOは、全体的に業績が向上し、特に売上高、営業利益、純利益が前年に比べて大幅に増加しました。特にプラットフォーム事業が急成長を遂げ、売上収益が65.1%増加しましたが、利益は減少しています。このようなトレンドは、企業の成長戦略における新規事業の重要性を示しています。
2023年度の総括
株式会社LITALICOは、2023年度において以下のような業績を達成しました。
項目 | 2023年度 | 前年 | 増加率 |
---|---|---|---|
売上高 | 29,792百万円 | 24,170百万円 | 23.3% |
営業利益 | 3,715百万円 | 2,928百万円 | 26.9% |
純利益 | 1,817百万円 | 1,570百万円 | 15.7% |
これらの数値から、企業は堅調な成長を遂げており、特にプラットフォーム事業の成長が顕著です。流動資産が増加し、純資産も増加していることから、財務健全性が向上していることが示されています。
来年度以降の事業計画
株式会社LITALICOは、以下のような事業計画を策定しています。
- 新規事業の展開: 米国ネブラスカ州のDDCN社を通じて、海外の障害福祉サービス市場に参入します。これにより、国際的な事業展開を加速させる計画です。
- プラットフォーム事業の強化: プラットフォーム事業の成長を維持するために、さらなる投資を行い、サービスの質を向上させることを目指します。
- 人材の確保と育成: 専門的な知識を持つ人材の確保と育成に注力し、サービスの質を向上させることで競争力を強化します。
- リスク管理の強化: 法規制の変化や競合の影響に対するリスク管理を強化し、持続可能な成長を目指します。
今後の動向予測
今後の動向については、以下のような予測が立てられます。
- 成長の持続: 障害福祉サービスの需要は今後も増加すると予想され、LITALICOの成長が持続する可能性が高いです。特に、プラットフォーム事業の成長が業績を牽引するでしょう。
- 国際展開の影響: 米国市場への参入が成功すれば、収益の多様化が進み、リスク分散が図られることが期待されます。
- 競争環境の変化: 競合他社の動向や新規参入者の影響を受ける可能性があるため、競争優位性を維持するための戦略が重要です。
- 財務健全性の維持: 流動負債の増加には注意が必要ですが、純資産の増加は企業の財務健全性を示しており、今後も安定した経営が期待されます。
結論
株式会社LITALICOは、2023年度において顕著な成長を遂げ、今後も新規事業の展開やプラットフォーム事業の強化を通じて持続的な成長を目指しています。リスク管理や競争環境への対応が今後の成功に向けた鍵となるでしょう。
1. 資産の構成
項目 | 2023年3月31日 | 2024年3月31日 | 増加額 |
---|---|---|---|
流動資産合計 | 5,783百万円 | 6,701百万円 | 918百万円 |
固定資産合計 | 10,721百万円 | 10,156百万円 | -565百万円 |
資産合計 | 16,504百万円 | 17,871百万円 | 1,367百万円 |
2. 負債の構成
項目 | 2023年3月31日 | 2024年3月31日 | 増加額 |
---|---|---|---|
流動負債合計 | 7,715百万円 | 9,905百万円 | 2,190百万円 |
固定負債合計 | 8,649百万円 | 7,966百万円 | -683百万円 |
負債合計 | 16,364百万円 | 17,871百万円 | 1,507百万円 |
3. 純資産の構成
項目 | 2023年3月31日 | 2024年3月31日 | 増加額 |
---|---|---|---|
株主資本合計 | 7,855百万円 | 9,905百万円 | 2,050百万円 |
新株予約権 | 263百万円 | 341百万円 | 78百万円 |
純資産合計 | 8,118百万円 | 10,246百万円 | 2,128百万円 |
4. トレンドの分析
- 資産: 全体的に増加しており、流動資産が特に増加しています。これは、短期的な資金繰りが改善されていることを示唆しています。
- 負債: 流動負債が増加している一方で、固定負債は減少しています。流動負債の増加は短期的な負担が増加していることを示していますが、固定負債の減少は長期的な負担が軽減されていることを示しています。
- 純資産: 増加しており、特に株主資本が大きく増加しています。これは、企業の財務健全性が向上していることを示しています。
結論
全体として、株式会社LITALICOは資産が増加し、負債の構成が改善されていることから、財務健全性が向上していると評価できます。流動負債の増加には注意が必要ですが、純資産の増加は企業の成長を示しています。
流動比率と自己資本比率の計算
1. 流動比率の計算
流動比率は、流動資産を流動負債で割った比率で、短期的な支払い能力を示します。
- 流動資産合計(2024年3月31日): 5,783百万円
- 流動負債合計(2024年3月31日): 7,715百万円
流動比率 = (流動資産合計 / 流動負債合計) × 100
流動比率 = (5,783 / 7,715) × 100 ≈ 74.8%
2. 自己資本比率の計算
自己資本比率は、自己資本を総資本で割った比率で、長期的な支払い能力を示します。
- 自己資本合計(2024年3月31日): 9,905百万円
- 負債合計(2024年3月31日): 17,871百万円
総資本 = 自己資本 + 負債 = 9,905 + 17,871 = 27,776百万円
自己資本比率 = (自己資本合計 / 総資本) × 100
自己資本比率 = (9,905 / 27,776) × 100 ≈ 35.7%
3. 過去の数値との比較
流動比率のトレンド
- 前事業年度(2023年3月31日)の流動資産合計: 5,974百万円
- 前事業年度(2023年3月31日)の流動負債合計: 7,706百万円
流動比率(2023年3月31日) = (5,974 / 7,706) × 100 ≈ 77.5%
トレンド: 流動比率は77.5%から74.8%に減少しています。これは短期的な支払い能力が若干低下していることを示しています。
自己資本比率のトレンド
- 前事業年度(2023年3月31日)の自己資本合計: 9,563百万円
- 前事業年度(2023年3月31日)の負債合計: 17,871百万円(同じ)
総資本(2023年3月31日) = 9,563 + 17,871 = 27,434百万円
自己資本比率(2023年3月31日) = (9,563 / 27,434) × 100 ≈ 34.8%
トレンド: 自己資本比率は34.8%から35.7%に増加しています。これは長期的な支払い能力が改善していることを示しています。
4. 結論
全体として、短期的な支払い能力は若干の低下が見られるものの、長期的な支払い能力は改善していることが確認されます。
業績のトレンド
売上高
- 前事業年度 (2022年4月1日 - 2023年3月31日): 24,170百万円
- 当事業年度 (2023年4月1日 - 2024年3月31日): 29,792百万円
営業利益
- 前事業年度 (2022年4月1日 - 2023年3月31日): 2,928百万円
- 当事業年度 (2023年4月1日 - 2024年3月31日): 3,715百万円
純利益の計算
- 前事業年度 (2022年4月1日 - 2023年3月31日): 1,570百万円
- 当事業年度 (2023年4月1日 - 2024年3月31日): 1,817百万円
トレンドのまとめ
- 売上高: 24,170百万円から29,792百万円に成長。
- 営業利益: 2,928百万円から3,715百万円に成長。
- 純利益: 1,570百万円から1,817百万円に成長。
結論
全体的に、株式会社LITALICOは2023年度において、売上高、営業利益、純利益のすべてが前年に比べて増加しており、業績が向上していることが示されています。
営業利益率と純利益率の計算
1. 営業利益率の計算
営業利益率は、営業利益を売上収益で割ったものです。
- 2023年度の売上収益: 29,792百万円
- 2023年度の営業利益: 3,715百万円
営業利益率 = (営業利益 / 売上収益) × 100
営業利益率 = (3,715 / 29,792) × 100 ≈ 12.47%
2. 純利益率の計算
純利益率は、税引前当期利益を売上収益で割ったものです。
- 2023年度の税引前当期利益: 2,218百万円
純利益率 = (税引前当期利益 / 売上収益) × 100
純利益率 = (2,218 / 29,792) × 100 ≈ 7.44%
3. 過去との比較トレンド
2022年度の数値
- 売上収益: 24,170百万円
- 営業利益: 6,316百万円
- 税引前当期利益: 2,928百万円
2022年度の営業利益率
営業利益率 = (6,316 / 24,170) × 100 ≈ 26.14%
2022年度の純利益率
純利益率 = (2,928 / 24,170) × 100 ≈ 12.12%
4. トレンドのまとめ
- 営業利益率のトレンド: 2022年度約26.14%から2023年度約12.47%に減少。
- 純利益率のトレンド: 2022年度約12.12%から2023年度約7.44%に減少。
結論
営業利益率は2022年度から2023年度にかけて減少しましたが、純利益率は増加しました。このことは、営業利益が売上に対して減少した一方で、税引前利益が相対的に改善されたことを示しています。
営業活動によるキャッシュフローの確認
1. 売上収益
- 2023年3月期: 24,170百万円
- 2024年3月期: 29,792百万円
- 増減額: +5,622百万円
- 増減率: +23.3%
2. 営業利益
- 2023年3月期: 2,928百万円
- 2024年3月期: 3,715百万円
- 増減額: +787百万円
- 増減率: +26.9%
3. 親会社の所有者に帰属する当期利益
- 2023年3月期: 1,812百万円
- 2024年3月期: 3,545百万円
- 増減額: +1,733百万円
- 増減率: +95.6%
評価
- 売上収益の増加: 売上収益が前年に比べて23.3%増加しており、これは企業の事業活動が拡大していることを示しています。
- 営業利益の増加: 営業利益も26.9%増加しており、売上の増加が利益に寄与していることがわかります。
- 当期利益の大幅な増加: 親会社の所有者に帰属する当期利益が95.6%増加しており、これは企業の収益性が大きく改善されたことを示しています。
結論
これらの数値から、株式会社LITALICOは営業活動を通じて現金を生成しており、事業活動が順調に進展していると評価できます。売上収益、営業利益、当期利益のいずれも前年に比べて大幅に増加しており、企業の成長が確認されます。
事業セグメントの概要
1. セグメント別業績
事業セグメント | 売上収益 (2023年3月期) | 売上収益 (2024年3月期) | 利益 (2023年3月期) | 利益 (2024年3月期) | 増減額 | 増減率 |
---|---|---|---|---|---|---|
就労支援事業 | 9,510百万円 | 10,585百万円 | 3,433百万円 | 3,531百万円 | +1,076百万円 | +11.3% |
児童福祉事業 | 7,928百万円 | 9,553百万円 | 1,517百万円 | 1,710百万円 | +1,625百万円 | +20.5% |
プラットフォーム事業 | 3,197百万円 | 5,838百万円 | 1,229百万円 | 506百万円 | +2,302百万円 | +65.1% |
その他 | 3,535百万円 | 3,817百万円 | 137百万円 | 188百万円 | +282百万円 | +12.8% |
2. 各セグメントの成長トレンド
- 就労支援事業: 安定した成長を示しており、売上収益は11.3%増加。
- 児童福祉事業: 成長を続けており、売上収益は20.5%の増加を記録。
- プラットフォーム事業: 急成長しており、売上収益は65.1%増加したが、利益は減少。
- その他の事業: 成長しており、売上収益は12.8%増加。
3. 事業ポートフォリオのバランス
LITALICOは、就労支援事業と児童福祉事業の安定した成長に加え、プラットフォーム事業の急成長を背景に多様なサービスを展開しています。各セグメントの成長率が異なるため、リスク分散が図られていると考えられます。
4. 過去との比較トレンド
2023年3月期と2024年3月期の比較において、全体的に売上収益と利益が増加しており、特にプラットフォーム事業の成長が顕著です。各セグメントの成長率は、前年と比較しても高い水準を維持しており、今後の成長が期待されます。
5. 結論
LITALICOは、障害福祉サービス業界において多様な事業を展開し、安定した成長を続けています。特にプラットフォーム事業の成長が目立ち、今後の業績に大きな影響を与える可能性があります。各セグメントの成長トレンドを注視し、事業ポートフォリオのバランスを評価することが重要です。
新規参入した事業セグメントについて
当社グループは、米国ネブラスカ州のDevelopmental Disability Center of Nebraska, LLC(以下「DDCN社」)の持分の100%を取得することで、米国の障害福祉サービスに参入し、2024年6月14日に事業展開を開始することを決定しました。この新規事業は、米国における障害福祉サービスの提供を目指しており、今後の海外事業の継続・拡大に向けて重要なステップとなります。
潜在的なリスク評価
- 継続企業の前提に関するリスク: 監査報告書において、継続企業の前提に関する重要な不確実性が認められる場合、財務諸表に対して除外事項付意見が表明される可能性があります。
- 法規制の強化・変更: 海外事業を展開するにあたり、国及び州・地方政府の法規制の強化・変更に対応する必要があります。
- 個人情報保護リスク: 顧客及び保護者の個人情報を保持しているため、不正アクセスやコンピュータウイルス等による情報漏洩が発生した場合、損害賠償義務や社会的信用の失墜が業績に影響を与える可能性があります。
- 競合の影響: 障害福祉サービス業界は人材の質に左右されるため、競合他社の事業拡大や新規参入により、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
- 事故やトラブルのリスク: 施設運営において事故が発生した場合、顧客の流出や指定取消し等が発生し、業績に影響を及ぼす可能性があります。
- 自然災害や感染症の影響: 自然災害や感染症の流行が発生した場合、施設の稼働が長期に渡って困難になる可能性があります。
- 人材の確保と育成: 専門的な知識や指導技術を持った人材の確保が急務であり、これが不足した場合、業績に影響を与える可能性があります。
- 財務状況に関するリスク: 有利子負債の変動や投資有価証券の価値変動、為替変動リスクが財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。