はじめに総括
特記事項
古河電気工業株式会社は2023年度において、売上高、営業利益、純利益がいずれも前年同期比で減少しており、特に純利益は59.1%の大幅な減少を記録しました。この減少は、原材料費の高騰や市場環境の変化が影響していると考えられます。
2023年度の総括
2023年度の古河電気工業株式会社は、流動資産の増加や自己資本比率の改善が見られる一方で、売上高や利益の減少が顕著でした。具体的には、売上高は1兆565億円で前年同期比0.9%減、営業利益は112億円で27.7%減、純利益は65億円で59.1%減少しました。これにより、営業利益率は1.06%、純利益率は0.62%と、いずれも前年よりも低下しています。
流動比率は約7.82%と非常に低く、流動負債に対する流動資産の割合が不十分であることが懸念されます。自己資本比率は33.3%と良好な水準ですが、負債の増加が見られるため、資金調達や運用に注意が必要です。
来年度以降の事業計画
古河電気工業株式会社は、持続可能な成長を目指し、以下のような事業計画を策定しています。
- ビジョン2030の推進: 環境調和製品の売上高比率を2025年度までに70%に引き上げることを目指しています。2023年度の実績は65.9%であり、引き続き環境負荷の低減に寄与する製品の開発を進めます。
- 新事業の研究開発: 新事業研究開発費の増加率は121%であり、引き続き新事業の実証・検証プロセスに注力します。これにより、将来的な収益源の確保を目指します。
- 人材マネジメントの強化: 従業員エンゲージメントスコアの向上を図り、2025年度には80を目指す方針です。これにより、組織の成長を支える人材の育成を進めます。
- リスク管理の強化: リスクマネジメント委員会を設置し、全社的なリスク評価を行い、重要リスクに対する対応を強化します。特に気候変動や人権・労働慣行に関するリスクを重視します。
今後の動向予測
今後の動向としては、以下のような予測が立てられます。
- 市場環境の変化: 市場環境の変化に敏感に対応し、特に自動車部品関連製品の需要が高まる中で、持続可能な製品の開発が進むことで、売上の回復が期待されます。
- 利益率の改善: 新事業の成功や高付加価値製品の需要増加により、営業利益率や純利益率の改善が見込まれます。
- 財務健全性の維持: 自己資本比率の改善が続く限り、財務健全性は維持されると考えられますが、流動比率の改善が求められます。
- 株主還元の強化: 業績が回復すれば、配当政策に基づく株主還元が強化される可能性があります。
財務健全性の評価とトレンド分析
1. 資産の構成
項目 | 金額(億円) |
---|---|
受取手形、売掛金及び契約資産 | 162 |
棚卸資産 | 114 |
有形固定資産 | 94 |
投資有価証券 | 121 |
合計流動資産 | 1,169 |
2. 負債の構成
項目 | 金額(億円) |
---|---|
流動負債 | 3,330 |
合計負債 | 6,270 |
3. 純資産の構成
項目 | 金額(億円) |
---|---|
合計純資産 | 3,580 |
4. 財務健全性の評価
自己資本比率: 33.3%(前連結会計年度末比で1.0ポイント上昇)
5. トレンド分析
- 流動資産は前年より増加しており、運転資本も増加しています。
- 負債は増加していますが、自己資本も増加しているため、全体的な財務健全性は維持されています。
- 純資産の増加は、企業の成長を示しており、特にその他の包括利益の増加が寄与しています。
結論
古河電気工業株式会社は、流動資産の増加と自己資本比率の改善により、財務健全性が向上していますが、負債の増加も見られるため、今後の資金調達や運用に注意が必要です。全体としては、安定した財務基盤を持っていると評価できます。
流動比率と自己資本比率の計算
1. 流動比率の計算
流動比率は以下の式で計算されます。
流動比率 = (流動資産 / 流動負債) × 100
流動資産と流動負債の数値
- 流動資産: 491億円
- 流動負債: 6,270億円
流動比率の計算
流動比率 = (491 / 6270) × 100 ≈ 7.82%
2. 自己資本比率の計算
自己資本比率は以下の式で計算されます。
自己資本比率 = (自己資本 / 総資本) × 100
自己資本と総資本の数値
- 自己資本: 3,580億円
- 総資本: 9,850億円
自己資本比率の計算
自己資本比率 = (3580 / 9850) × 100 ≈ 36.36%
3. 過去とのトレンド比較
- 流動比率: 前年度よりも改善している可能性がありますが、具体的な前年度の流動比率は記載されていないため、比較はできません。
- 自己資本比率: 前連結会計年度末比で1.0ポイント上昇し33.3%となったと記載されています。
結論
流動比率: 約7.82%
自己資本比率: 約36.36%
トレンド: 自己資本比率は前年度よりも改善しており、流動比率は具体的な前年度の数値がないため、改善の有無は不明ですが、流動資産が増加していることから、流動性の向上が期待されます。
売上高、営業利益、純利益のトレンド
項目 | 2023年度 | 2022年度 | トレンド |
---|---|---|---|
売上高 | 1兆565億円 | 1兆065億円 | 0.9%減少 |
営業利益 | 112億円 | 155億円 | 27.7%減少 |
純利益 | 65億円 | 159億円 | 59.1%減少 |
営業利益率と純利益率の計算
1. 営業利益率の計算
営業利益率 = (営業利益 / 売上高) × 100 営業利益率 = (112億円 / 1兆565億円) × 100 = 1.06%
2. 純利益率の計算
純利益率 = (純利益 / 売上高) × 100 純利益率 = (65億円 / 1兆565億円) × 100 = 0.62%
3. 過去の数値との比較
項目 | 2022年度 | 2023年度 | トレンド |
---|---|---|---|
営業利益率 | 1.45% | 1.06% | 0.39ポイント減少 |
純利益率 | 1.49% | 0.62% | 0.87ポイント減少 |
営業活動によるキャッシュフローの状況
営業活動によるキャッシュ・フロー: +319億円(前連結会計年度比△46億円)
事業セグメントごとの収益状況
セグメント | 連結売上高(億円) | 連結営業利益(億円) |
---|---|---|
インフラ | 2,782 | △113 |
電装エレクトロニクス | 6,537 | 187 |
機能製品 | 1,154 | 55 |
サービス・開発等 | 316 | △19 |
潜在的なリスク要因
- 気候変動リスク
- 人権・労働慣行リスク
- 人的資本リスク
- 市場リスク
- 研究開発リスク
- 法令遵守リスク
将来の業績予測と中期計画
配当政策と将来の配当予想
- 配当政策: 親会社株主に帰属する当期純利益の30%を目途
- 配当性向: 業績に応じて変動
- 将来の配当予想: 業績が順調に推移すれば増加の可能性