【ファンダメンタル分析】I-PEX【有価証券報告書】

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はじめに総括

特記事項

2023年度において、I-PEX株式会社は売上高が前年同期比で減少し、営業損失と当期純損失を計上しました。特に、電気・電子部品事業の低迷が全体の業績に影響を与えています。一方で、自動車部品事業は成長を遂げており、今後の市場回復が期待されます。

2023年度の総括

I-PEX株式会社は2023年度において、以下のような財務状況を示しました。

項目 金額(百万円) 前年同期比
資産合計 91,603 634百万円減少
負債合計 52,888 5,458百万円減少
純資産合計 58,387 24,496百万円増加

財務健全性は改善しており、資産対負債比率は約1.73、純資産比率は約63.8%と高い水準を維持しています。流動比率も219.9%と、短期的な支払い能力が向上しています。

業績面の課題

業績面では以下のような課題が見られました。

項目 金額(百万円) 前年同期比
売上高 59,014 1.1%減
営業損失 759 前年同期は営業利益978百万円
当期純損失 1,269 前年同期は親会社株主に帰属する当期純利益168百万円

特に、電気・電子部品事業の売上高が前年同期比で9.6%減少し、セグメント利益も大幅に悪化しました。一方、自動車部品事業は19.9%の増加を記録しましたが、依然として営業損失を計上しています。

来年度以降の事業計画

I-PEX株式会社は、以下のような戦略を掲げて来年度以降の事業計画を進める予定です。

  1. 自動車部品事業の拡大: 電動化・電子化に即した新たなビジネスの獲得を目指し、成長市場への展開を図ります。
  2. 電気・電子部品事業の再構築: 市場の回復を見込んで、コネクタやHDD関連部品の需要を喚起する施策を講じます。
  3. 新市場の開拓: ロボットやライフサイエンス分野の成長市場に注力し、収益源の多様化を図ります。
  4. コーポレート機能の強化: 資本コストを意識した経営を推進し、効率的な設備投資を実施します。
  5. リスク管理の強化: 売上債権の増加に対する早期回収施策を講じ、キャッシュフローの安定化を図ります。

今後の動向予測

I-PEX株式会社の今後の動向については、以下のように予測されます。

  • 自動車部品事業の成長: 自動車市場の回復に伴い、特に電動化に関連する部品の需要が増加することが期待されます。
  • 電気・電子部品事業の改善: 市場環境が改善されれば、電気・電子部品事業も回復する可能性があります。
  • 財務健全性の維持: 負債の減少と純資産の増加により、財務健全性は引き続き高い水準を維持する見込みです。
  • リスク要因の管理: 外部環境の不透明感や競争の激化に対して、リスク管理を強化することで、安定した成長を目指す必要があります。

結論

I-PEX株式会社は2023年度において厳しい経営環境に直面しましたが、財務健全性は改善しています。来年度以降は、自動車部品事業の成長を中心に、電気・電子部品事業の再構築や新市場の開拓を進めることで、業績の回復を目指す方針です。

2023年度の財務状況

資産

項目 金額(百万円) 日付
流動資産合計 43,281 2023年12月31日
固定資産合計 48,321 2023年12月31日
資産合計 91,603 2023年12月31日

負債

項目 金額(百万円) 日付
流動負債合計 19,673 2023年12月31日
固定負債合計 33,215 2023年12月31日
負債合計 52,888 2023年12月31日

純資産

項目 金額(百万円) 日付
純資産合計 58,387 2023年12月31日

過去のトレンド

項目 2022年(百万円) 2023年(百万円) 変化
資産合計 92,237 91,603 634百万円減
負債合計 58,346 52,888 5,458百万円減
純資産合計 33,891 58,387 24,496百万円増

財務健全性の評価

項目 2023年 2022年 変化
資産対負債比率 約1.73 約1.58 改善
純資産比率 約63.8% 約36.8% 改善

結論

I-PEX株式会社は、2023年度において資産は若干減少したものの、負債が大幅に減少し、純資産が大きく増加したことから、財務健全性が改善しています。

流動比率自己資本比率の計算

流動比率

流動比率は、流動資産を流動負債で割った比率です。

  • 流動資産(2023年12月31日): 43,281百万円
  • 流動負債(2023年12月31日): 19,673百万円

流動比率 = (流動資産 / 流動負債) × 100 = (43,281 / 19,673) × 100 ≈ 219.9%

自己資本比率

自己資本比率は、自己資本を総資本で割った比率です。

  • 自己資本(2023年12月31日): 51,473百万円
  • 総資本(2023年12月31日): 91,603百万円

自己資本比率 = (自己資本 / 総資本) × 100 = (51,473 / 91,603) × 100 ≈ 56.2%

過去との比較トレンド

流動比率の過去比較

  • 流動資産(2022年12月31日): 41,193百万円
  • 流動負債(2022年12月31日): 19,673百万円

流動比率(2022年) = (41,193 / 19,673) × 100 ≈ 209.5%

トレンド: 2022年: 約209.5% → 2023年: 約219.9%(増加: 約10.4ポイント)

自己資本比率の過去比較

  • 自己資本(2022年12月31日): 54,296百万円
  • 総資本(2022年12月31日): 92,237百万円

自己資本比率(2022年) = (54,296 / 92,237) × 100 ≈ 58.8%

トレンド: 2022年: 約58.8% → 2023年: 約56.2%(減少: 約2.6ポイント)

結論

流動比率は増加しており、短期的な支払い能力が向上しています。自己資本比率は減少していますが、依然として高い水準を維持しています。

営業活動によるキャッシュフローの状況

以下に、I-PEX株式会社の2023年度の営業活動によるキャッシュフローの状況をまとめます。

項目 金額(百万円)
税金等調整前当期純損失 688
減価償却 6,645
棚卸資産の減少 1,303
仕入債務の増加 458
前受金の増加 598
売上債権の増加 1,804

営業活動によるキャッシュフローの合計

営業活動によるキャッシュフローの増加: 6,868百万円(前連結会計年度は9,669百万円の増加)

評価

営業活動によるキャッシュフローはプラスであるため、事業活動が健全に行われていると評価できます。ただし、売上債権の増加には注意が必要です。

各事業セグメントの収益性や成長性、リスクの評価

2023年度のセグメント情報

事業セグメント 売上高(百万円) 前年同期比 セグメント利益(百万円)
電気・電子部品事業 33,083 9.6%減 △577
自動車部品事業 21,343 19.9%増 △708
設備事業 4,587 12.3%減 527

2022年度のセグメント情報

事業セグメント 売上高(百万円) セグメント利益(百万円)
電気・電子部品事業 36,611 2,545
自動車部品事業 17,802 △2,314
設備事業 5,229 976

事業ポートフォリオのバランス評価

自動車部品事業は成長が見込まれ、利益も改善しているため、ポートフォリオの中での重要なセグメントとなっています。一方、電気・電子部品事業は現在の市場環境においてリスクが高く、成長が見込まれない状況です。

結論

I-PEX株式会社は、自動車部品事業において成長を遂げている一方で、電気・電子部品事業の低迷が全体の業績に影響を与えています。事業ポートフォリオの見直しやリスク管理が今後の成長に向けて重要です。

新たな事業基盤の確立

MEMS技術を活用し、新たな事業基盤の確立を図る。MEMS関連ビジネスにおいて、世界で初めてPZTの単結晶化に成功した子会社を通じて、材料開発から量産までのプロセスをグループ内で完結できる体制を構築。

事業拡大

  • 自動車等電動化に伴う新市場への展開
  • ロボット・ライフサイエンスの成長市場の開拓

収益性と健全性の両立

事業上及び財務上の課題

  1. 財務体質の強化
  2. 事業構造の改革

経営成績の状況

項目 金額(百万円)
売上高 59,014
営業損失 759
経常損失 555
当期純損失 1,269

財政状態の状況

項目 金額(百万円)
総資産 91,603
負債 33,215
純資産 58,387

キャッシュ・フローの状況

項目 金額(百万円)
営業活動によるキャッシュ・フロー 6,868
投資活動によるキャッシュ・フロー 2,781
財務活動によるキャッシュ・フロー 3,066
現金及び現金同等物の期末残高 15,582

リスク要因

  • 市場変動の影響
  • 設備投資リスク
  • 需要予測の不確実性

結論

I-PEX株式会社は、2023年度において営業損失を計上し、当期純損失が発生したにもかかわらず742百万円の配当を行いました。配当性向はマイナスであり、将来の配当の持続可能性には懸念が残ります。