株式会社コーセー 2023年度有価証券報告書
はじめに総括
特記事項
株式会社コーセーは2023年度において、売上高は増加したものの、営業利益と純利益が大幅に減少しました。特に、営業利益は27.7%減、純利益は37.9%減という厳しい結果となりました。このトレンドは、主に中国及び韓国のトラベルリテール事業の苦戦や、マーケティング費用及び人件費の増加が影響しています。
2023年度の総括
2023年度のコーセーは、売上高が300,406百万円(前年度比3.9%増)に達しましたが、営業利益は15,985百万円(前年度比27.7%減)、純利益は11,663百万円(前年度比37.9%減)と、利益面での厳しい状況が続いています。流動資産は減少し、特に売掛金が減少したことは、売上の減少を示唆しています。一方で、固定資産は増加しており、長期的な投資が行われていることがわかります。
来年度以降の事業計画
- コスト管理の強化: 営業利益の減少を受けて、コスト削減や効率化を図る必要があります。特に、マーケティング費用や人件費の見直しが求められます。
- 新製品の投入: 消費者のニーズに応えるため、環境に配慮した製品や多様な肌色に対応した商品開発を進めることが重要です。
- 海外市場の開拓: 特にアジア市場におけるトラベルリテールの回復を見込んで、海外展開を強化する方針が考えられます。
- デジタル化の推進: オンライン販売の強化やデジタルマーケティングの活用を進め、消費者との接点を増やすことが期待されます。
今後の動向予測
- 売上の回復: 新製品の投入や海外市場の開拓により、売上は徐々に回復する可能性があります。特に、アジア市場での需要が高まることが期待されます。
- 利益率の改善: コスト管理の強化や効率化が進むことで、営業利益率や純利益率の改善が見込まれます。
- 持続可能性への取り組み: 環境意識の高まりに応じて、サステナビリティに配慮した製品開発が進むことで、ブランド価値の向上が期待されます。
結論
株式会社コーセーは、2023年度において売上高は増加したものの、利益面での厳しい状況が続いています。今後はコスト管理や新製品の投入、海外市場の開拓を通じて、売上の回復と利益率の改善を目指すことが重要です。市場環境の変化に柔軟に対応し、持続可能な成長を実現するための戦略が求められます。
資産、負債、純資産の構成とそのトレンド
1. 資産の構成
- 流動資産: 売掛金、受取手形、棚卸資産などが含まれます。
- 固定資産: 有形固定資産や無形固定資産が含まれます。
- 有形固定資産: 31,290百万円(2023年) vs 29,774百万円(2022年) - 増加
- 無形固定資産: 2,197百万円(2023年) vs 2,140百万円(2022年) - 増加
2. 負債の構成
- 流動負債: 短期借入金、買掛金、未払金などが含まれます。
- 契約負債: 580百万円(2023年) vs 540百万円(2022年) - 増加
- 短期金銭債務: 4,751百万円(2023年) vs 3,366百万円(2022年) - 増加
- 固定負債: 長期借入金や社債などが含まれます。
3. 純資産の構成
- 純資産: 株主資本、利益剰余金などが含まれます。
4. トレンドの分析
- 資産: 流動資産の減少は売掛金の減少によるもので、これは売上の減少を示唆していますが、固定資産は増加しており、長期的な投資が行われていることがわかります。
- 負債: 流動負債の増加は短期的な資金調達の必要性を示しており、特に契約負債の増加は将来の収益に対する期待を反映しています。
- 純資産: 当期純利益の増加は企業の収益性が改善していることを示しており、全体的に健全な財務状態を維持していると考えられます。
結論
株式会社コーセーは、2023年度において資産の増加と負債の増加が見られますが、純資産も増加しており、全体的には健全な財務状態を維持していると評価できます。特に、固定資産の増加は将来の成長に向けた投資を示唆しています。
流動比率と自己資本比率の計算
1. 流動比率の計算
流動比率は、流動資産を流動負債で割った比率で、短期的な支払い能力を示します。
流動資産と流動負債の数値
- 流動資産(2023年12月31日)
- 流動負債(2023年12月31日)
- 契約負債: 580百万円
- その他流動負債: (具体的な数値は記載されていないため、仮に流動負債合計を計算するために必要な数値を推定する必要があります)
流動比率の計算式は以下の通りです:
2. 自己資本比率の計算
自己資本比率は、自己資本を総資本で割った比率で、企業の財務的安定性を示します。
自己資本と総資本の数値
- 自己資本(2023年12月31日)
- 総資本(2023年12月31日)
自己資本比率の計算式は以下の通りです:
3. 過去の数値との比較
過去の数値(2022年度)を参照するためには、2022年度の流動資産、流動負債、自己資本、総資本の数値が必要です。これらの数値は、2022年度の有価証券報告書から取得する必要があります。
売上高、営業利益、純利益の推移とトレンド
売上高
- 2022年度: 289,136百万円
- 2023年度: 300,406百万円
- 増減額: 11,269百万円
- 増減率: 3.9%
営業利益
- 2022年度: 22,120百万円
- 2023年度: 15,985百万円
- 増減額: -6,134百万円
- 増減率: -27.7%
純利益
- 2022年度: 18,771百万円
- 2023年度: 11,663百万円
- 増減額: -7,108百万円
- 増減率: -37.9%
トレンド分析
- 売上高: 売上高は前年に比べて増加しており、3.9%の成長を示しています。これは、特に日本市場や欧米市場での需要が回復したことが寄与しています。
- 営業利益: 営業利益は大幅に減少しており、27.7%の減少を記録しています。これは、中国及び韓国のトラベルリテール事業の苦戦や、マーケティング費用及び人件費の増加が影響しています。
- 純利益: 純利益も前年に比べて大きく減少し、37.9%の減少となっています。営業利益の減少に加え、為替差益の減少が影響していると考えられます。
結論
全体として、コーセーは売上高の増加を達成したものの、コストの増加や市場環境の変化により、営業利益と純利益は大幅に減少しました。特に、トラベルリテール事業の影響が顕著であり、今後の市場環境やコスト管理が重要な課題となるでしょう。
営業利益率と純利益率の計算
1. 営業利益率の計算
営業利益率は、営業利益を売上高で割ったものです。
2022年度
- 売上高: 289,136百万円
- 営業利益: 22,120百万円
- 営業利益率 = (22,120 / 289,136) × 100 = 7.6%
2023年度
- 売上高: 300,406百万円
- 営業利益: 15,985百万円
- 営業利益率 = (15,985 / 300,406) × 100 = 5.3%
2. 純利益率の計算
純利益率は、親会社株主に帰属する当期純利益を売上高で割ったものです。
2022年度
- 親会社株主に帰属する当期純利益: 18,771百万円
- 純利益率 = (18,771 / 289,136) × 100 = 6.5%
2023年度
- 親会社株主に帰属する当期純利益: 11,663百万円
- 純利益率 = (11,663 / 300,406) × 100 = 3.9%
3. トレンドの比較
- 営業利益率
- 2022年度: 7.6%
- 2023年度: 5.3%
- トレンド: 営業利益率は減少しています。
- 純利益率
- 2022年度: 6.5%
- 2023年度: 3.9%
- トレンド: 純利益率も減少しています。
まとめ
営業利益率は2022年度の7.6%から2023年度の5.3%に減少しました。純利益率も2022年度の6.5%から2023年度の3.9%に減少しています。この結果から、コーセーは売上高が増加したにもかかわらず、営業利益率と純利益率が減少していることがわかります。これは、コストの増加や競争の激化などが影響している可能性があります。
経営成績の概要
- 売上高: 300,406百万円(前期比3.9%増)
- 営業利益: 15,985百万円(前期比27.7%減)
- 経常利益: 20,252百万円(前期比28.7%減)
- 親会社株主に帰属する当期純利益: 11,663百万円(前期比37.9%減)
財政状態
- 資産合計: 371,657百万円(前期比12,057百万円増)
- 負債合計: 88,619百万円(前期比4,368百万円増)
- 純資産合計: 283,038百万円(前期比7,688百万円増)
キャッシュ・フローの状況
- 営業活動によるキャッシュ・フロー: 30,443百万円の収入
- 投資活動によるキャッシュ・フロー: 11,227百万円の支出
- 主な要因:
- 有形固定資産の取得: 3,383百万円
- 無形固定資産の取得: 2,143百万円
- 主な要因:
- 財務活動によるキャッシュ・フロー: 9,677百万円の支出
- 主な要因:
- 配当金の支払い: 7,987百万円
- 主な要因:
経営者の視点による分析
重要な会計上の見積り
繰延税金資産の回収可能性は、将来の収益力に基づく課税所得及びタックス・プランニングに基づいて判断されており、経済環境の変化によって影響を受ける可能性があります。
リスク管理
価格競争、消費者嗜好の変化、原材料の価格高騰、政治・経済リスクなどが主要なリスクとして挙げられ、それに対する取り組みが行われています。
事業セグメントの収益状況
化粧品事業
- 売上高: 240,450百万円(前期比2.3%増)
- 営業利益: 17,868百万円(前期比29.7%減)
- 利益率: 営業利益率は約7.4%(17,868 / 240,450 * 100)
コスメタリー事業
- 売上高: 57,656百万円(前期比10.4%増)
- 営業利益: 2,941百万円(前期比167.0%増)
- 利益率: 営業利益率は約5.1%(2,941 / 57,656 * 100)
その他
- 売上高: 2,299百万円(前期比18.9%増)
- 営業利益: 978百万円(前期比8.4%減)
- 利益率: 営業利益率は約42.6%(978 / 2,299 * 100)
事業ポートフォリオのバランス
化粧品事業が全体の約80%を占めており、依然として主力セグメントですが、利益率の低下が懸念されます。コスメタリー事業は成長を続けており、利益率も改善しています。その他の事業は小規模ながらも安定した利益率を維持しています。
過去との比較トレンド
化粧品事業は売上高は増加したものの、営業利益は大幅に減少しており、競争環境の厳しさが影響しています。コスメタリー事業は売上高と営業利益が共に増加しており、成長が見られます。その他は売上高は増加したが、営業利益は減少しており、コスト管理が課題です。
成長セグメントとリスク
コスメタリー事業は成長が顕著で、今後も注目されるセグメントです。化粧品事業は中国市場の競争激化やトラベルリテールの減少がリスク要因となっています。また、全体的に物価高や消費者マインドの冷え込みも影響を与える可能性があります。
結論
株式会社コーセーは、化粧品事業が依然として主力であるものの、コスメタリー事業の成長が見られ、事業ポートフォリオのバランスが重要です。今後の市場環境や競争状況に応じた戦略的な対応が求められます。
潜在的なリスク要因
1. 戦略リスク
- 価格競争: 競合他社との価格競争が激化し、ブランド価値が毀損される可能性。
- 消費者嗜好の変化: 消費者ニーズとの乖離が生じることで、ブランド価値が低下するリスク。
- 気候変動対応の遅れ: 低炭素化社会に適応できない場合、事業収益性が低下する可能性。
- 人権問題・雇用差別: 人権リスクに対する対応が不十分な場合、企業の収益性やレピュテーションが損なわれるリスク。
2. 事業・財務リスク
- 原材料の価格高騰: 原材料価格の上昇が利益率に影響を与える可能性。
- 政治・経済リスク: 海外市場における政治情勢の変化が事業に影響を及ぼすリスク。
- 事故・災害リスク: 自然災害や事故による生産・物流機能の停止が事業活動に影響を与える可能性。
3. マーケットリスク
- 需要変動: 市場の需要変動が売上高や利益率に影響を与えるリスク。
- 法的規制の改変: 法規制の変更が事業運営に影響を及ぼす可能性。
4. 人事・労務リスク
- 優秀な人材の確保: 人材の確保が難しくなることで、企業競争力が低下するリスク。
- 法令違反・賠償リスク: 製品事故や情報漏洩による信用損失や損害賠償のリスク。
5. 環境リスク
- 気候変動の影響: 気候変動による原材料調達リスクや生産制限が事業に影響を与える可能性。
企業の取り組み
コーセーは、これらのリスクに対して以下のような取り組みを行っています。
- 市場調査: 消費者の情報を適切に入手するための市場調査を定期的に実施。
- 研究開発: 先端技術を用いた研究開発を行い、競争力を維持。
- サステナビリティ: TCFDに基づく気候変動リスクへの対応や、環境配慮型製品の開発を推進。
- 人権方針: 国際規範に基づいた人権方針を策定し、リスク調査と情報開示を行う。
業績予測や中期計画
1. 中期経営計画
コーセーは「コーセー サステナビリティ プラン」を策定し、2030年までの中長期目標を設定しています。このプランは、社会・環境課題の確認や外部ステークホルダーの意見を取り入れた上で、企業が取り組むべき重要課題を特定し、具体的な取り組みテーマを設定しています。
2. 目標達成のための具体的な取り組み
- 多様性の尊重: 商品・サービスの提供率を2030年までに100%にすることを目指し、多様な肌色や肌質に対応した商品設計やユニバーサルデザインの採用を進めています。
- 健康経営: 従業員の健康向上を図るため、健康経営の推進や次世代への健康教育を行い、具体的な取り組みを30件以上実施することを目指しています。
- 環境への配慮: CO2排出量の削減目標を設定し、2030年までにScope1・2で55%、Scope3で30%の削減を目指しています。また、再生可能エネルギーの利用やプラスチック容器包装資材のサステナビリティに配慮した設計を進めています。
3. リスク管理
コーセーは、リスクマネジメント・コンプライアンス委員会を通じて、持続的発展を脅かすリスクに対処しています。特に、気候変動に関連するリスクをERM(統合型リスク管理)で評価し、サステナビリティ委員会と連携して監視しています。
4. 業績予測
コーセーは、気候変動や社会的課題に対する取り組みを強化することで、消費者の環境意識の高まりに応じた製品開発を進め、売上の増加を図る方針です。また、再生可能エネルギーの導入や省エネ設備の導入により、コスト競争力を強化し、利益率の向上を目指しています。
5. 目標達成の可能性
コーセーの目標達成の可能性は、以下の要因に依存します。
- 市場の環境意識の高まり: 消費者の環境配慮商品への需要が高まる中で、コーセーが適切な製品を提供できるかどうか。
- 技術革新: 環境配慮型製品の開発や製造プロセスの効率化が進むかどうか。
- リスク管理の強化: 気候変動や市場の変化に対するリスク管理が適切に行われるかどうか。
これらの要因を考慮すると、コーセーは中期計画に基づいた目標達成の可能性が高いと考えられますが、外部環境の変化や競争状況に応じた柔軟な対応が求められます。