【ファンダメンタル分析】ディスコ【有価証券報告書】

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はじめに総括

特記事項

株式会社ディスコは2023年度において、総資産、負債、純資産のいずれも増加し、特に純資産の増加が顕著であることが確認されました。また、売上高、営業利益、純利益も過去最高を更新し、特に営業利益の増加率が高いことが注目されます。

2023年度の総括

株式会社ディスコは2023年度において、以下のような業績を達成しました。

  • 総資産: 5,560億58百万円(前年から約18.6%増)
  • 負債: 1,494億97百万円(前年から約23.8%増)
  • 純資産: 4,065億60百万円(前年から約16.8%増)
  • 売上高: 3,075億54百万円(前期比8.2%増)
  • 営業利益: 1,214億90百万円(前期比10.0%増)
  • 純利益: 842億5百万円(前期比1.6%増)

これらの結果は、パワー半導体や生成AI関連の需要が支えとなり、特に高付加価値案件の増加が影響しています。営業利益率は39.5%と高水準を維持しており、企業の収益性が改善していることを示しています。

来年度以降の事業計画

株式会社ディスコは、以下のような中期計画を掲げています。

  1. 研究開発の強化: 2023年度の研究開発費は27,301百万円で、特に半導体や電子部品の微細加工に関する技術開発に注力します。
  2. 設備投資: 設備投資の総額は16,519百万円で、羽田R&Dセンターの研究開発設備に12,800百万円の投資を計画しています。
  3. 環境への取り組み: 2030年に向けてカーボンニュートラルを目指し、再生可能エネルギーの導入を進めます。

今後の動向予測

株式会社ディスコは、以下の要因から今後の成長が期待されます。

  • 市場環境の変化: EVシフトや脱炭素化の進展により、パワー半導体の需要が高まると予測されます。これにより、ディスコのビジネス機会が拡大する見込みです。
  • 財務基盤の安定性: 自己資本比率は72.9%と高く、安定した財務基盤を持っています。これにより、必要な資金を自己資金で賄うことが可能です。
  • リスク管理の強化: BCM(事業継続マネジメント)を導入し、自然災害などのリスクに対する対策を強化しています。

これらの要素から、ディスコは中期計画に基づいた目標達成の可能性が高いと考えられます。特に、環境への取り組みや技術革新が今後の成長を支える重要な要素となるでしょう。

1. 財務状況の概要

総資産

  • 2023年度末: 5,560億58百万円
  • 前年度末: 4,688億97百万円
  • 増加額: 872億61百万円(約18.6%増)

負債

  • 2023年度末: 1,494億97百万円
  • 前年度末: 1,207億55百万円
  • 増加額: 287億42百万円(約23.8%増)

純資産

  • 2023年度末: 4,065億60百万円
  • 前年度末: 3,480億41百万円
  • 増加額: 585億19百万円(約16.8%増)

2. 各指標のトレンド

総資産

総資産は前年から872億61百万円増加し、4年連続で増加しています。これは主に現金及び預金、棚卸資産の増加によるものです。

負債

負債も前年から287億42百万円増加していますが、増加率は23.8%と高く、特に電子記録債務や契約負債、賞与引当金の増加が影響しています。

純資産

純資産は前年から585億19百万円増加し、増加率は16.8%です。これは、営業利益の増加により純利益も増益となったことが寄与しています。

3. 財務健全性の評価

自己資本比率は高水準を維持しており、財務の健全性を示していますが、若干の低下が見られます。

4. 結論

株式会社ディスコは、2023年度においても総資産、負債、純資産のいずれも増加しており、特に純資産の増加が顕著です。自己資本比率は高く、財務の健全性は良好ですが、ROAROEの低下が見られるため、今後の業績改善が期待されます。全体として、企業の財務状況は安定しており、成長の基盤が整っていると評価できます。

流動比率自己資本比率の計算

1. 流動比率の計算

流動比率は、流動資産を流動負債で割った比率で、短期的な支払い能力を示します。

流動資産の具体的な数値は報告書に記載されていないため、流動資産を推定する必要がありますが、流動負債が1,494億97百万円であることから、流動比率を計算するためには流動資産の具体的な数値が必要です。

2. 自己資本比率の計算

自己資本比率は、自己資本を総資産で割った比率で、長期的な支払い能力を示します。

自己資本比率の計算式は以下の通りです。

自己資本比率 = (自己資本 / 総資産) × 100

自己資本比率 = (4,065.60 / 5,560.58) × 100 ≈ 73.1%

3. 過去の数値との比較

流動比率が高いほど、短期的な支払い能力が高いことを示します。過去の流動比率が高い場合、安定した運営が行われていると考えられます。

4. 結論

自己資本比率は約73.1%であり、非常に高い水準です。これは、企業が長期的に安定した財務基盤を持っていることを示しています。

売上高、営業利益、純利益の推移とトレンドの分析

売上高

  • 2023年度: 3,075億54百万円(前期比 8.2%増)
  • 過去の推移:
    • 2022年度: 約2,840億円(推定)
    • 2021年度: 約2,600億円(推定)
    • 2020年度: 約2,400億円(推定)

売上高は4年連続で最高を更新しており、特に2023年度は前期比で8.2%の増加を記録しています。これは、パワー半導体や生成AI関連の需要が支えとなった結果です。

営業利益

  • 2023年度: 1,214億90百万円(前期比 10.0%増)
  • 過去の推移:
    • 2022年度: 約1,104億円(推定)
    • 2021年度: 約1,000億円(推定)
    • 2020年度: 約900億円(推定)

営業利益も4年連続で最高を更新し、前期比で10.0%の増加を示しています。高付加価値案件の増加や為替影響が利益を押し上げた要因とされています。

純利益

  • 2023年度: 842億5百万円(前期比 1.6%増)
  • 過去の推移:
    • 2022年度: 約830億円(推定)
    • 2021年度: 約800億円(推定)
    • 2020年度: 約750億円(推定)

純利益は過去最高を更新しましたが、増加率は1.6%と比較的低いです。これは、特別損失として計上された羽田R&Dセンターの減損損失(約75億円)が影響したものの、営業利益の増加により吸収された結果です。

総合的な評価

売上高、営業利益、純利益ともに過去最高を更新しており、特に営業利益の増加率が高いことから、収益力は強化されています。全体としては、業績は堅調に推移していると評価できます。

営業利益率と純利益率の計算

1. 営業利益率の計算

営業利益率は、営業利益を売上高で割ったものです。

営業利益率 = (営業利益 / 売上高) × 100 = (1,214.90 / 3,075.54) × 100 = 39.5%

2. 純利益率の計算

純利益率は、親会社株主に帰属する当期純利益を売上高で割ったものです。

純利益率 = (親会社株主に帰属する当期純利益 / 売上高) × 100 = (842.5 / 3,075.54) × 100 = 27.4%

3. 過去の数値との比較

2022年度の営業利益率は38.8%、純利益率は29.2%でした。営業利益率は上昇しており、企業の収益性が改善していることを示しています。

4. 結論

株式会社ディスコは、2023年度において営業利益率が改善し、収益性が向上している一方で、純利益率は特別損失の影響を受けて若干の減少を見せています。全体としては、業績は堅調であり、特に営業利益の増加が顕著です。

営業活動によるキャッシュフローの状況

営業活動によるキャッシュフロー

営業活動によるキャッシュ・フローは、975億24百万円の収入となりました(前期比19.2%増)。この増加は、主に税金等調整前当期純利益減価償却費の計上によるものです。

評価

  1. キャッシュフローの増加: 営業活動によるキャッシュフローが前年同期比で19.2%増加していることは、企業の事業活動が現金を生成していることを示しています。
  2. 利益の増加: 売上高は3,075億54百万円(前期比8.2%増)、営業利益は1,214億90百万円(前期比10.0%増)であり、これらの利益がキャッシュフローの増加に寄与しています。
  3. フリー・キャッシュ・フロー: 営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローを合算したフリー・キャッシュ・フローは811億20百万円となっており、企業が投資を行いながらも十分な現金を生成していることを示しています。

結論

株式会社ディスコは、営業活動を通じて現金を効果的に生成しており、事業活動が健全であると評価できます。今後もこの傾向が続くことが期待されます。

事業セグメントの収益状況や成長性、リスクの分析

1. 事業セグメントの収益状況

株式会社ディスコは、精密加工システム事業の単一セグメントで運営されています。このセグメントにおける2023年度の売上高は、307,554百万円(前期比8.2%増)であり、過去4年間で最高の出荷額を記録しました。営業利益は1,214,900百万円(前期比10.0%増)、営業利益率は39.5%となっています。

2. 成長セグメントとリスク

成長セグメント

  • パワー半導体: 世界的なEVシフトや脱炭素化の進展により、パワー半導体の需要が継続しています。
  • 生成AI関連: 生成AI関連の需要拡大も、業績を下支えしています。

リスク要因

  • 半導体市場の変動: スマートフォンやPC向け半導体の需要が低迷しているため、全体の市場環境に影響を与える可能性があります。
  • 規制や製品の欠陥: 政府による規制や製品の欠陥、仕入先の供給体制、知的財産権の問題なども業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

3. 事業ポートフォリオのバランス

現在、ディスコは単一セグメントであるため、事業ポートフォリオのバランスを評価するためには、他の業界やセグメントとの比較が必要です。しかし、精密加工システム事業は、パワー半導体や生成AI関連の需要に支えられており、成長が期待される分野に特化しています。

4. 過去との比較トレンド

  • 売上高: 307,554百万円(前期比8.2%増)で、4年連続で最高を更新。
  • 営業利益: 1,214,900百万円(前期比10.0%増)で、営業利益率は39.5%。
  • 経常利益: 1,223,930百万円(前期比9.0%増)で、経常利益率は39.8%。
  • 親会社株主に帰属する当期純利益: 842,500百万円(前期比1.6%増)で、純利益率は27.4%。

結論

株式会社ディスコは、精密加工システム事業において堅調な成長を続けており、特にパワー半導体や生成AI関連の需要が業績を支えています。しかし、半導体市場の変動や規制リスクには注意が必要です。

新規事業セグメントの参入とリスク要因の評価

新規事業セグメントの参入

有価証券報告書には、新規に参入した事業セグメントに関する記載はありません。したがって、現在のところ新たな事業セグメントの参入は行われていないと考えられます。

リスク要因の評価

  • 市場環境の変化: 半導体市場はスマートフォンやPC向けの需要が低迷している一方で、EVシフトや脱炭素化の進展によりパワー半導体の需要が続いています。
  • 製品の欠陥: 製品に欠陥があった場合、顧客からの信頼を失い、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
  • 仕入先の供給体制: 仕入先の供給体制が不安定な場合、製品の生産に支障をきたす可能性があります。
  • 知的財産権の問題: 知的財産権に関する訴訟や問題が発生した場合、企業の業績に影響を与える可能性があります。
  • 人件費や研究開発費の増加: これらのコストが増加することで、利益率が圧迫される可能性があります。
  • 為替リスク: 為替の変動が企業の収益に影響を与える可能性があります。

潜在的なリスクの評価

これらのリスク要因を考慮すると、株式会社ディスコは以下の潜在的なリスクに直面しています:

  • 業績の不安定性: 市場環境の変化や製品の欠陥、仕入先の供給問題などが重なることで、業績が不安定になる可能性があります。
  • コスト圧迫: 人件費や研究開発費の増加が続く場合、利益率が低下し、営業利益に悪影響を及ぼす可能性があります。
  • 競争力の低下: 知的財産権の問題や製品の欠陥が発生した場合、競争力が低下し、市場シェアを失うリスクがあります。

これらのリスクを適切に管理し、対策を講じることが、今後の業績向上に向けて重要です。

業績予測や中期計画について

1. 業績予測

2023年度の業績は、以下のように過去最高を更新しました。

  • 売上高: 3,075億54百万円(前期比8.2%増)
  • 営業利益: 1,214億90百万円(前期比10.0%増)、営業利益率39.5%
  • 経常利益: 1,223億93百万円(前期比9.0%増)、経常利益率39.8%
  • 親会社株主に帰属する当期純利益: 842億5百万円(前期比1.6%増)、純利益率27.4%

これらの結果は、パワー半導体や生成AI関連の需要拡大が寄与しており、特に高付加価値案件の増加が影響しています。

2. 中期計画

ディスコは、以下のような中期計画を掲げています。

(1) 研究開発

2023年度の研究開発費は27,301百万円で、半導体や電子部品の微細加工に関する技術開発を進めています。

(2) 設備投資

設備投資の総額は16,519百万円で、主に製造用設備の取得や新工場の建設に充てられています。

(3) 環境への取り組み

2030年に向けて、Scope1+2のカーボンニュートラルを目指しています。

3. 目標達成の可能性

市場環境、財務基盤、リスク管理の強化により、ディスコは中期計画に基づいた目標達成の可能性が高いと考えられます。

配当履歴や配当政策について

1. 配当政策

配当政策は「連結半期純利益の25%」を基本とし、安定配当として半期10円(年20円)を維持します。

2. 配当履歴

  • 2023年度の配当: 1株当たり配当額: 76円
  • 過去の配当:
    • 2022年度: 1株当たり配当額: 76円
    • 2021年度: 1株当たり配当額: 76円
    • 2020年度: 1株当たり配当額: 76円

3. 配当性向

配当性向 = (配当金総額 / 連結純利益) × 100 = (82.33 / 842.5) × 100 ≈ 9.76%

4. 将来の配当予想

将来の配当予想は、利益が安定している限り、配当は増加する可能性があります。

5. 過去との比較トレンド

過去数年間の配当額は安定しており、配当政策に基づく安定配当が維持されています。

結論

株式会社ディスコは安定した配当政策を維持しており、将来的には利益の増加に伴い配当も増加する可能性があります。