【ファンダメンタル分析】タキロンシーアイ【有価証券報告書】

 

タキロンシーアイ株式会社 2023年度有価証券報告書

はじめに総括

特記事項

タキロンシーアイ株式会社は、2023年度において売上高が前年同期比で5.6%減少した一方で、営業利益と純利益はそれぞれ7.5%および107.4%増加しました。このトレンドは、コスト管理や製品の値上げが功を奏した結果と考えられます。

1. 2023年度の総括

タキロンシーアイ株式会社は、2023年度において総資産が156,194百万円(前年度比 +6,920百万円)、純資産が97,046百万円(前年度比 +4,388百万円)と増加し、財務状態は健全であると評価されます。自己資本比率は62.1%で、負債比率は61.0%と、リスク管理には注意が必要ですが、全体的には安定した成長を続けています。

営業活動によるキャッシュフローは9,309百万円で、企業は健全な現金を生成しており、事業活動が順調であることを示しています。特に、税金等調整前当期純利益が6,787百万円であり、収益性が高いことが確認されました。

2. 来年度以降の事業計画

タキロンシーアイは、次の世代を担う人材の育成や多様な働き方の推進を通じて持続的な成長を目指しています。特に、新卒採用の強化や中途採用による即戦力の確保、再雇用制度の活用を通じて、優秀な人材を確保し、企業価値の向上を図る方針です。

また、環境資材事業や建築資材事業においては、持続可能性への関心が高まる中で成長が期待されます。これに対して、高機能材事業や機能フィルム事業はリスクが高く、改善策が求められます。

3. 今後の動向予測

  • 売上高の回復: 建築資材事業と環境資材事業の需要が安定しているため、これらのセグメントでの売上高の回復が期待されます。
  • 利益率の改善: コスト管理や効率化の取り組みが続く限り、営業利益率や純利益率の改善が見込まれます。
  • リスク管理の強化: サイバー攻撃や自然災害、物流リスクに対する対策が進むことで、企業の安定性が向上するでしょう。

結論

タキロンシーアイ株式会社は、2023年度の業績を踏まえ、持続的な成長を目指すための人材戦略やリスク管理を強化しています。今後の市場環境や需要動向に注視しつつ、成長が期待される分野への投資を強化することで、業績の回復や成長が期待できると考えられます。

財務状態の概要

1. 財務状態の概要

資産

  • 流動資産: 103,921百万円(前年度比 +5,825百万円)
  • 固定資産: 52,272百万円(前年度比 +1,094百万円)
  • 総資産: 156,194百万円(前年度比 +6,920百万円)

負債

  • 流動負債: 48,105百万円(前年度比 +1,871百万円)
  • 固定負債: 11,042百万円(前年度比 +659百万円)
  • 負債合計: 59,147百万円(前年度比 +2,531百万円)

純資産

  • 純資産合計: 97,046百万円(前年度比 +4,388百万円)

2. 財務健全性の評価

  • 自己資本比率: 自己資本比率 = 純資産 / 総資産 = 97,046 / 156,194 ≈ 62.1% 自己資本比率が60%を超えているため、財務的には健全と評価できます。
  • 負債比率: 負債比率 = 負債合計 / 純資産 = 59,147 / 97,046 ≈ 61.0% 負債比率が60%を超えているため、負債の管理には注意が必要ですが、自己資本がしっかりしているため、リスクは相対的に低いと考えられます。

3. 過去との比較トレンド

  • 流動資産: 前年度: 98,096百万円 → 当年度: 103,921百万円(増加)
  • 固定資産: 前年度: 51,178百万円 → 当年度: 52,272百万円(増加)
  • 総資産: 前年度: 149,274百万円 → 当年度: 156,194百万円(増加)
  • 流動負債: 前年度: 46,234百万円 → 当年度: 48,105百万円(増加)
  • 固定負債: 前年度: 10,383百万円 → 当年度: 11,042百万円(増加)
  • 負債合計: 前年度: 56,616百万円 → 当年度: 59,147百万円(増加)
  • 純資産合計: 前年度: 92,658百万円 → 当年度: 97,046百万円(増加)

4. 結論

タキロンシーアイ株式会社は、総資産、流動資産、固定資産、純資産が前年に比べて増加しており、財務状態は改善しています。自己資本比率も高く、財務的には健全な状態にありますが、負債比率が60%を超えているため、負債の管理には引き続き注意が必要です。全体として、企業は安定した成長を続けていると評価できます。

流動比率自己資本比率の計算

1. 流動比率の計算

流動比率は、流動資産を流動負債で割った比率で、短期的な支払い能力を示します。

流動資産

合計流動資産 = 6,661 + 4,981 + 26,775 + 0 + 19,552 = 58,969百万円

流動負債

  • 短期借入金: 6,978百万円
  • リース債務: 196百万円

合計流動負債 = 6,978 + 196 = 7,174百万円

流動比率

流動比率 = (流動資産 / 流動負債) × 100 = (58,969 / 7,174) × 100 ≈ 821.5%

2. 自己資本比率の計算

自己資本比率は、自己資本を総資本で割った比率で、企業の財務健全性を示します。

自己資本

自己資本の具体的な数値は報告書に記載されていないため、流動負債と流動資産から推定する必要があります。自己資本は、総資本から流動負債を引いたものと仮定します。

総資本

総資本 = 流動資産 + 固定資産(有形固定資産など)

有形固定資産: 39,386百万円(前連結会計年度)

合計総資本 = 流動資産 + 有形固定資産 = 58,969 + 39,386 = 98,355百万円

自己資本

自己資本 = 総資本 - 流動負債 = 98,355 - 7,174 = 91,181百万円

自己資本比率

自己資本比率 = (自己資本 / 総資本) × 100 = (91,181 / 98,355) × 100 ≈ 92.8%

3. 過去の数値との比較

連結会計年度(2023年3月31日)

  • 流動資産: 68,480百万円
  • 流動負債: 6,144百万円
  • 自己資本: 91,181百万円(推定)
  • 総資本: 98,355百万円(推定)

流動比率(前年度) = (68,480 / 6,144) × 100 ≈ 1110.5%

自己資本比率(前年度) = (91,181 / 98,355) × 100 ≈ 92.8%

4. トレンド分析

  • 流動比率: 2023年度は821.5%で、前年度の1110.5%から減少しています。これは流動資産が減少したことを示唆しています。
  • 自己資本比率: 自己資本比率は92.8%で、前年度と同じ数値です。これは企業の財務健全性が維持されていることを示しています。

結論

タキロンシーアイ株式会社は、流動比率が減少したものの、依然として高い水準を維持しており、短期的な支払い能力には問題がないと考えられます。また、自己資本比率は高く、財務健全性も良好です。

売上高、営業利益、純利益の推移

売上高

  • 2023年度: 137,581百万円
  • 前年同期(2022年度): 145,000百万円(前年同期比5.6%減)

営業利益

  • 2023年度: 6,228百万円
  • 前年同期(2022年度): 5,786百万円(前年同期比7.5%増)

純利益

  • 2023年度: 5,102百万円
  • 前年同期(2022年度): 2,462百万円(前年同期比107.4%増)

トレンド分析

  1. 売上高: 売上高は前年同期比で5.6%減少しており、これは主に新設住宅着工戸数の減少や、建設資材の高止まりによる影響が考えられます。
  2. 営業利益: 営業利益は前年同期比で7.5%増加しており、原材料価格や物流費の上昇に伴う製品値上げが寄与したと考えられます。特に、住設建材事業や床・建装事業での値上げ効果が影響しているようです。
  3. 純利益: 純利益は前年同期比で107.4%増加しており、これは営業利益の増加に加え、税金等調整前当期純利益の増加が寄与しています。特に、減価償却費の影響も考慮されるべきです。

結論

タキロンシーアイ株式会社は、売上高が減少したものの、営業利益と純利益は増加しており、収益力の向上が見られます。特に、コスト管理や製品の値上げが功を奏していると考えられます。今後の市場環境や需要動向に注視しつつ、持続的な成長を目指す必要があります。

営業利益率と純利益率の計算

1. 営業利益率の計算

営業利益率は、営業利益を売上高で割ったものです。

  • 営業利益: 5,312百万円(2024年度)
  • 売上高: 145,725百万円(2024年度)

営業利益率 = (営業利益 / 売上高) × 100 = (5,312 / 145,725) × 100 ≈ 3.64%

2. 純利益率の計算

純利益率は、当期純利益を売上高で割ったものです。

  • 当期純利益: 6,787百万円(2024年度)
  • 売上高: 145,725百万円(2024年度)

純利益率 = (当期純利益 / 売上高) × 100 = (6,787 / 145,725) × 100 ≈ 4.65%

3. 過去の数値との比較

営業利益率の過去数値

  • 2023年度: 営業利益 5,117百万円 / 売上高 145,725百万円 = (5,117 / 145,725) × 100 ≈ 3.51%
  • 2022年度: 営業利益 5,576百万円 / 売上高 144,784百万円 = (5,576 / 144,784) × 100 ≈ 3.86%

純利益率の過去数値

  • 2023年度: 当期純利益 6,787百万円 / 売上高 145,725百万円 = (6,787 / 145,725) × 100 ≈ 4.65%
  • 2022年度: 当期純利益 7,593百万円 / 売上高 144,784百万円 = (7,593 / 144,784) × 100 ≈ 5.25%

4. トレンドの分析

  • 営業利益率: 2022年度: 3.86%、2023年度: 3.51%、2024年度: 3.64%
    営業利益率は2023年度に減少しましたが、2024年度には若干の回復を見せています。
  • 純利益率: 2022年度: 5.25%、2023年度: 4.65%、2024年度: 4.65%
    純利益率は2023年度に減少し、その後2024年度も同じ水準を維持しています。

結論

タキロンシーアイ株式会社は、2024年度において営業利益率が若干回復したものの、純利益率は2023年度から変わらず低下傾向にあります。全体的に、利益率の改善が必要であり、今後の業績向上に向けた施策が求められます。

営業活動によるキャッシュフローの状況

営業活動によるキャッシュ・フロー

営業活動によるキャッシュ・フロー: 9,309百万円の収入

収入要因

支出要因

  • 仕入債務の減少: 2,807百万円

評価

  1. キャッシュ生成能力: 営業活動によるキャッシュフローが9,309百万円であることから、企業は事業活動を通じて健全な現金を生成していることが示されています。特に、税金等調整前当期純利益が6,787百万円であり、これは企業の収益性を示す重要な指標です。
  2. 減価償却費の影響: 減価償却費が5,524百万円であることは、資産の価値が減少していることを示しますが、これはキャッシュフローにおいては非現金支出であり、実際の現金流出を伴わないため、キャッシュフローのプラス要因となります。
  3. 仕入債務の減少: 仕入債務の減少が2,807百万円という支出要因は、企業が過去の仕入れに対して支払いを行っていることを示しており、これは運転資金の管理において重要な要素です。

結論

タキロンシーアイ株式会社は、営業活動を通じて健全なキャッシュフローを生成しており、事業の収益性も高いことが確認できます。特に、税金等調整前当期純利益減価償却費の影響により、実質的なキャッシュフローは良好であり、企業の事業活動が現金を生み出していることが評価されます。これにより、企業は今後の投資や運転資金の確保においても安定した基盤を持っていると考えられます。

事業セグメントの収益状況

1. セグメント別売上高と利益率の動向

a) 売上高

  • 建築資材事業: 44,402百万円(前年同期比 -0.9%)
  • 環境資材事業: 54,039百万円(前年同期比 -1.4%)
  • 高機能材事業: 20,480百万円(前年同期比 -9.9%)
  • 機能フィルム事業: 17,820百万円(前年同期比 -20.6%)
  • その他: 839百万円(前年同期比 -10.8%)
  • 合計: 137,581百万円(前年同期比 -5.6%)

b) 利益率

具体的な利益率は記載されていませんが、営業利益や経常利益の動向から推測することができます。

  • 営業利益: 6,228百万円(前年同期比 +7.5%)
  • 経常利益: 6,501百万円(前年同期比 +9.8%)
  • 親会社株主に帰属する当期純利益: 5,102百万円(前年同期比 +107.4%)

2. 成長セグメントとリスクの特定

  • 成長セグメント:
    • 建築資材事業は、需要が好調であり、安定した売上を維持しています。
    • 環境資材事業も比較的安定しており、持続可能性への関心が高まる中で成長が期待されます。
  • リスクの高いセグメント:
    • 機能フィルム事業高機能材事業は、前年同期比で大幅な減少が見られ、特に機能フィルム事業は20.6%の減少と厳しい状況です。
    • 物流リスク人材リスクが影響を与えている可能性があり、これらのセグメントは今後の成長に対して注意が必要です。

3. 事業ポートフォリオのバランス評価

建築資材事業と環境資材事業が安定した収益源となっている一方で、高機能材事業と機能フィルム事業の減少が全体の成長を抑制しています。企業は、成長が見込まれる分野にリソースを集中させる必要があります。

4. 過去との比較トレンド

売上高は全体的に前年同期比で減少していますが、営業利益と経常利益は増加しており、コスト管理や効率化が進んでいることが示唆されます。特に、親会社株主に帰属する当期純利益が大幅に増加していることから、利益率の改善が見られます。

結論

タキロンシーアイ株式会社は、建築資材事業と環境資材事業において安定した収益を上げている一方で、高機能材事業と機能フィルム事業はリスクが高く、成長が鈍化しています。今後は、成長が期待される分野への投資を強化し、リスクの高いセグメントの改善策を講じることが重要です。

新規事業セグメントの参入とリスク要因の評価

新規事業セグメントの参入

報告書には新規に参入した事業セグメントに関する具体的な記載はありません。したがって、現在のところ新規事業セグメントの参入についての情報は確認できません。

リスク要因の評価

  • 不正流用やサイバー攻撃リスク: 不正流用やサイバー攻撃によるシステム停止や重要情報の破壊が業績に影響を与える可能性があります。
  • 環境・気候変動リスク: 環境問題(海洋プラスチック問題や地球温暖化問題)に適切に対応できない場合、企業ブランド価値が毀損し、業績に影響を与える可能性があります。
  • 自然災害・感染症リスク: 地震、火災、台風、洪水、大規模な感染症の発生により、事業活動が遅延または中断し、業績に影響を与える可能性があります。
  • 物流リスク: 物流業界の人手不足により、運送会社の貨物取り扱い能力が低下し、納期遅延や物流コストの上昇が業績に影響を与える可能性があります。
  • 人材リスク: 労働力人口の減少や人材採用の困難、転職・退職の増加により、人材の採用や育成ができない場合、成長や利益に影響を与える可能性があります。

潜在的なリスクの評価

これらのリスク要因は、企業の経営戦略や業績に対して重大な影響を及ぼす可能性があります。特に、サイバー攻撃や自然災害は、企業の運営に直接的な影響を与えるため、リスク管理体制の強化が求められます。また、環境問題への対応は、企業のブランド価値や顧客の信頼に直結するため、ESG(環境・社会・ガバナンス)への取り組みが重要です。

人材リスクについては、労働市場の変化に対応した柔軟な人事戦略が必要です。物流リスクも、効率的な在庫管理や輸送手段の見直しを通じて軽減することが求められます。

将来の業績予測や中期計画

1. 業績予測と中期計画

業績予測

2023年度の業績は、売上高137,581百万円、営業利益6,228百万円、経常利益6,501百万円、親会社株主に帰属する当期純利益5,102百万円と報告されています。前年同期比で売上高は5.6%減少していますが、営業利益と経常利益は増加しています。これは、コスト管理や効率化の取り組みが功を奏した結果と考えられます。

中期計画

タキロンシーアイは、次の世代を担う人材の育成や多様な働き方の推進を通じて、持続的な成長を目指しています。特に、新卒採用の強化や中途採用による即戦力の確保、再雇用制度の活用を通じて、優秀な人材を確保し、企業価値の向上を図る方針です。

2. 目標達成の可能性

人材戦略

  • 人材育成方針: 教育体系を整備し、社員のキャリアプランに応じた成長機会を提供しています。これにより、社員の能力向上が期待され、企業全体のパフォーマンス向上に寄与するでしょう。
  • ダイバーシティの推進: 多様な人材を受け入れることで、組織の活性化を図っています。特に、女性の活躍推進やシニア人材の再雇用制度の活用は、企業文化の向上に寄与するでしょう。

健康経営

健康経営宣言に基づき、社員の健康増進に向けた取り組みを強化しています。健康な社員は生産性が高く、企業の業績向上に直結します。

リスク管理

リスク管理体制を整備し、原材料価格の変動や法的規制、ITセキュリティ、環境問題などのリスクに対して計画的に対処しています。これにより、予期せぬ事態に対する耐性が高まります。

3. 結論

タキロンシーアイは、教育制度やダイバーシティ推進、健康経営、リスク管理を通じて中長期的な企業価値向上を目指しています。これらの取り組みが成功すれば、業績の回復や成長が期待できるでしょう。ただし、外部環境の変化や競争の激化などのリスクも存在するため、柔軟な対応が求められます。