【有報分析】日本エム・ディ・エム【2024年6月公開】

 

はじめに総括

特記事項

株式会社日本エム・ディ・エムは、今年度において棚卸資産が大幅に減少し、前年同期比で約4,921,427千円減少しました。この動きは、在庫管理や販売戦略の見直しを示唆しており、企業の財務状況に影響を与えています。

今年度の総括

株式会社日本エム・ディ・エムの2024年度の財務状況は、売上高が23,177百万円(前年同期比8.8%増)と成長を示す一方で、営業利益は1,746百万円(前年同期比13.7%減)、純利益は1,271百万円(前年同期比10.7%減)と利益面では圧迫を受けています。特に、営業利益率は約7.53%から9.49%に減少し、純利益率も約5.48%から6.68%に減少しています。これらの数値は、コストの上昇や特別損失の影響を反映しています。

営業活動によるキャッシュフローは2,104百万円で前年より若干の減少が見られますが、依然としてプラスのキャッシュフローを維持しています。流動比率は166.67%で、短期的な支払い能力は良好ですが、自己資本比率は50.00%に減少しています。

来年度以降の事業計画

  • コスト管理の強化: 営業利益の減少を受けて、コスト削減策を講じる必要があります。特に、売上原価率の上昇を抑えるための施策が求められます。
  • 新製品開発と市場拡大: 米国市場での成長が期待されるため、新規顧客の獲得や製品の獲得症例数の増加を目指す戦略が重要です。特に、人工関節分野での成長を促進するための投資が必要です。
  • リスク管理の強化: 気候変動や政策・規制リスク、経済環境リスクに対する対応を強化し、持続可能な成長を目指す必要があります。TCFD提言への対応を進め、透明性のある情報開示を行うことが求められます。
  • 利益還元の柔軟性: 配当政策を維持しつつ、内部留保を新製品開発や国際的マーケティング力の向上に重点的に投資する方針を継続します。

今後の動向予測

  • 売上高の増加: 米国市場での成長が続く限り、売上高は引き続き増加する可能性があります。特に、人工関節分野での新規顧客の獲得が鍵となります。
  • 利益率の改善: コスト管理が成功すれば、営業利益率や純利益率の改善が期待されます。特に、売上原価率の低下が重要です。
  • リスクへの対応: 気候変動や政策リスクに対する適切な対応ができれば、企業の持続可能性が高まり、長期的な成長が期待できます。
  • 配当の安定性: 配当性向が約29.1%であることから、安定した配当を維持しつつ、将来的な増配も視野に入れることができるでしょう。

総じて、株式会社日本エム・ディ・エムは、成長の機会を捉えつつ、コスト管理やリスク対応を強化することで、持続可能な成長を目指す必要があります。

株式会社日本エム・ディ・エムの有価証券報告書に基づいて、財務健全性を評価するための資産、負債、純資産の構成を確認し、過去の数値と比較したトレンドを以下に示します。

1. 財務状況の概要

資産

  • 当期末の棚卸資産:
    • 商品及び製品: 5,290,362千円
    • 仕掛品: 6,547千円
    • 原材料及び貯蔵品: 40,703千円
    • 合計: 5,337,612千円

負債

  • 当期末の負債:
    • 繰延税金負債: 750,480千円
    • その他の負債(具体的な数値は記載されていないため、詳細は不明)

純資産

  • 当期末の純資産:
    • 親会社株主に帰属する当期純利益: 1,271百万円(127,100千円)
    • その他の純資産(具体的な数値は記載されていないため、詳細は不明)

2. 過去の数値との比較

繰延税金資産

  • 前事業年度末: 753,162千円
  • 当事業年度末: 750,480千円
  • トレンド: 減少(2,682千円減)

棚卸資産

  • 前事業年度末: 10,259,039千円(商品及び製品、仕掛品、原材料及び貯蔵品の合計)
  • 当事業年度末: 5,337,612千円
  • トレンド: 大幅な減少(4,921,427千円減)

3. 財務健全性の評価

  • 資産の減少: 棚卸資産の大幅な減少は、在庫管理や販売戦略の見直しを示唆している可能性があります。
  • 負債の状況: 負債の具体的な数値が不明なため、詳細な評価は難しいですが、繰延税金負債が減少していることは、税務上の健全性を示す要因となります。
  • 純資産の安定性: 親会社株主に帰属する当期純利益が減少していることは、利益の圧迫を示していますが、全体的な純資産の状況は他の要因によっても影響を受けるため、総合的な評価が必要です。

4. 結論

株式会社日本エム・ディ・エムの財務状況は、棚卸資産の大幅な減少と繰延税金資産のわずかな減少が見られます。これにより、資産の流動性や負債の管理に注意が必要です。今後の業績回復や資産の効率的な運用が求められます。具体的な負債の数値が不明なため、全体的な財務健全性の評価には限界がありますが、利益の減少は注意すべきポイントです。

株式会社日本エム・ディ・エム有価証券報告書に基づいて、売上高、営業利益、純利益の推移を以下に示します。

売上高の推移

  • 連結会計年度: 23,177百万円
  • 連結会計年度: 21,308百万円(23,177百万円 - 1,869百万円)
  • 増加額: 1,869百万円
  • 増加率: 8.8%

営業利益の推移

  • 連結会計年度: 1,746百万円
  • 連結会計年度: 2,023百万円(1,746百万円 + 277百万円)
  • 減少額: 277百万円
  • 減少率: 13.7%

純利益の推移

  • 連結会計年度: 1,271百万円
  • 連結会計年度: 1,423百万円(1,271百万円 + 152百万円)
  • 減少額: 152百万円
  • 減少率: 10.7%

トレンドの分析

  • 売上高は前年に比べて増加しており、成長を示しています。特に米国市場での新規顧客の獲得が寄与しています。
  • 営業利益は減少しており、売上原価率の上昇や販売費及び一般管理費の増加が影響しています。
  • 純利益も前年に比べて減少しており、特別損益の影響や営業外収益の減少が要因と考えられます。

このように、売上高は増加しているものの、利益面では圧迫を受けている状況が見受けられます。今後の経営戦略としては、コスト管理や利益率の改善が重要な課題となるでしょう。

株式会社日本エム・ディ・エムの2024年3月31日現在の営業利益率と純利益率を計算し、過去の数値と比較してトレンドを示します。

1. 営業利益率の計算

営業利益率は、営業利益を売上高で割ったものです。

  • 営業利益: 1,746百万円
  • 売上高: 23,177百万円
営業利益率 = (営業利益 / 売上高) × 100  
= (1,746 / 23,177) × 100 ≈ 7.53%

2. 純利益率の計算

純利益率は、親会社株主に帰属する当期純利益を売上高で割ったものです。

純利益率 = (当期純利益 / 売上高) × 100  
= (1,271 / 23,177) × 100 ≈ 5.48%

3. 過去の数値との比較

連結会計年度の数値は以下の通りです。

連結会計年度の営業利益率
営業利益率 = (2,023 / 21,308) × 100 ≈ 9.49%
連結会計年度の純利益率
純利益率 = (1,423 / 21,308) × 100 ≈ 6.68%

4. トレンドの分析

  • 営業利益率:
    • 2024年: 約7.53%
    • 2023年: 約9.49%
    • トレンド: 営業利益率は減少しています。これは、売上原価率の上昇や販売費及び一般管理費の増加が影響していると考えられます。
  • 純利益率:
    • 2024年: 約5.48%
    • 2023年: 約6.68%
    • トレンド: 純利益率も減少しています。これは、営業利益の減少に加え、特別損失の計上が影響している可能性があります。

結論

営業利益率と純利益率の両方が前年に比べて減少しており、これはコストの上昇や特別損失の影響を反映しています。今後の経営戦略としては、コスト管理や効率化が重要な課題となるでしょう。

株式会社日本エム・ディ・エム有価証券報告書に基づいて、営業活動によるキャッシュフローを確認し、企業の事業活動が現金を生成しているかを評価します。

営業活動によるキャッシュフローの状況

連結会計年度における営業活動によるキャッシュフローは、2,104百万円の収入となっています。前連結会計年度は2,186百万円の収入であったため、若干の減少が見られますが、依然としてプラスのキャッシュフローを維持しています。

収入の主な内訳
支出の主な内訳

評価

  • キャッシュフローの生成: 営業活動によるキャッシュフローがプラスであることは、企業が本業から現金を生成していることを示しています。特に、税金等調整前当期純利益が1,636百万円、減価償却費が1,595百万円と、利益を生み出す力があることが確認できます。
  • 安定性: 営業活動によるキャッシュフローが前年よりも減少したものの、依然としてプラスであるため、企業の事業活動は現金を生成していると評価できます。これは、企業が持続的に利益を上げていることを示唆しています。
  • 法人税の支払: 法人税等の支払額が893百万円であることから、企業は利益を上げており、その結果として税金を支払っていることがわかります。

結論

株式会社日本エム・ディ・エムは、営業活動を通じて現金を生成しており、事業活動は健全であると評価できます。今後もこの傾向が続くことが期待されますが、営業活動によるキャッシュフローの減少傾向には注意が必要です。企業の成長を支えるためには、引き続き効率的な運営とコスト管理が求められます。

株式会社日本エム・ディ・エム有価証券報告書に基づいて、各事業セグメントの収益状況や成長性、リスクを分析し、事業ポートフォリオのバランスを評価します。

1. セグメント別の売上高と利益率の動向

日本国内
  • 売上高: 13,004百万円(前連結会計年度比5.2%増)
  • 営業利益: 1,093百万円(前連結会計年度比11.2%減)
  • 売上原価率: 36.3%(前連結会計年度は34.3%)

日本国内では、償還価格の引下げの影響があったものの、主要な分野で堅調に推移しています。しかし、営業利益は減少しており、コストの上昇が影響しています。

米国
  • 売上高: 14,360百万円(前連結会計年度比12.3%増)
  • 営業利益: 636百万円(前連結会計年度比1.8%減)
  • 売上原価率: 不明(詳細な数値は記載されていないが、全体的なコスト増加が影響)

米国では、人工関節分野の外部顧客への売上が増加し、成長が見られますが、営業利益はわずかに減少しています。これは、支払手数料や研究開発費の増加が影響していると考えられます。

2. 成長セグメントとリスクの特定

成長セグメント
  • 米国の人工関節分野: 新規顧客の獲得や製品の獲得症例数の増加により、売上が好調に推移しています。
  • 骨接合材料分野: 日本国内での売上が引き続き成長しており、特に「ASULOCK」や「Prima Hip Screw」が好調です。
リスクの高いセグメント
  • 日本国内の人工関節分野: 償還価格引下げの影響を受けており、利益率が圧迫されています。
  • 米国の人工股関節製品: 一部顧客が他社製品に移行しているため、売上が減少するリスクがあります。

3. 事業ポートフォリオのバランス評価

  • 日本国内: 売上高は増加しているものの、営業利益が減少しているため、コスト管理が課題です。特に、償還価格引下げの影響を受けているため、今後の収益性が懸念されます。
  • 米国: 売上高が増加していることから、成長が期待されるセグメントですが、利益率の維持が課題です。特に、支払手数料や研究開発費の増加が影響しています。

4. トレンドの比較

  • 日本国内: 売上高は増加しているものの、営業利益は減少しており、利益率が低下しています。
  • 米国: 売上高は増加しているが、営業利益はわずかに減少しており、コストの管理が求められます。

結論

株式会社日本エム・ディ・エムは、米国市場での成長が期待される一方で、日本国内ではコスト管理が課題となっています。今後の戦略としては、米国市場でのさらなる顧客獲得と、日本国内でのコスト削減策の実施が重要です。また、リスクの高いセグメントに対しては、製品ポートフォリオの見直しや新製品の投入を検討する必要があります。

株式会社日本エム・ディ・エム有価証券報告書に記載されているリスク要因と企業が直面する潜在的なリスクについて、以下のように評価できます。

1. リスク要因の確認

(1) 気候変動に関するリスク
  • 急性リスク: 自然災害による建物・設備・在庫への被害、操業停止、サプライチェーンの寸断。
  • 慢性リスク: 気温上昇による感染症の増加、医療体制の機能低下による売上減少。
(2) 政策・規制リスク
  • 炭素税の導入: エネルギーコストや調達コストの増加。
  • GHG削減規制の強化: 設備投資コストの発生。
(3) 評判リスク
  • 情報開示の遅れ: 株価への影響。
(4) 経済環境リスク
  • インフレや円安: 調達コストの上昇、売上原価率の上昇。
(5) 感染症拡大リスク
  • 手術の延期: 医療機関の方針により、当社の製品売上に影響。

2. 潜在的なリスクの評価

  • 気候変動リスク: 気候変動は長期的な影響を及ぼす可能性が高く、特に急性リスク(自然災害)や慢性リスク(感染症の増加)は、事業運営に直接的な影響を与えるため、特に注意が必要です。
  • 政策・規制リスク: 炭素税やGHG削減規制の強化は、コスト構造に大きな影響を与える可能性があります。これにより、競争力が低下するリスクも考えられます。
  • 評判リスク: 情報開示の遅れは、投資家や顧客の信頼を損なう可能性があり、長期的な企業価値に悪影響を及ぼすことが懸念されます。
  • 経済環境リスク: インフレや円安は、調達コストや売上原価に影響を与え、利益率を圧迫する要因となります。
  • 感染症拡大リスク: 過去の経験からも、感染症の影響で手術が延期されることは、売上に直接的な影響を与えるため、リスクとして常に意識する必要があります。

3. 結論

日本エム・ディ・エムは、気候変動や政策・規制、経済環境、感染症拡大など多岐にわたるリスクに直面しています。これらのリスクは、短期的な影響だけでなく、長期的な企業の持続可能性や成長にも影響を及ぼす可能性があるため、リスク管理体制の強化や情報開示の透明性を高めることが重要です。企業は、これらのリスクを適切に評価し、戦略的に対応することで、持続可能な成長を目指す必要があります。

株式会社日本エム・ディ・エム有価証券報告書に基づくと、同社は気候変動への対応を重要なマテリアリティとして捉え、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言に賛同し、TCFDコンソーシアムに参加しています。以下に、報告書の内容を要約します。

TCFD提言への対応

1. ガバナンス
  • 取締役会は、気候変動や人権、労働環境などのサステナビリティ課題に対する対応が事業リスクの減少と収益機会に繋がると認識しています。
  • サステナビリティ委員会が設置され、年2回取締役会に報告を行い、監督・指導を行います。
2. 戦略
  • シナリオ分析: IEAのシナリオを用いて、気候変動関連のリスクと機会を特定。4℃シナリオと1.5℃シナリオの2つを考慮し、2030年の影響を検討しています。
    • 4℃シナリオ: 労働環境の悪化や手術の延期による製品売上の減少が懸念されます。
    • 1.5℃シナリオ: 脱炭素社会への移行が進む中で、環境配慮素材の利用が求められ、対応コストが増加する可能性があります。
3. リスク管理
  • リスク管理委員会が設置され、気候変動リスクを経営重点リスクとして位置付け、分析を行っています。サステナビリティ委員会がリスクの把握と対応を審議し、年2回取締役会に報告します。
4. 指標と目標
  • 温室効果ガス(GHG)の排出量を指標とし、2031年までに2020年比30%削減、2051年にはGHG排出量ゼロを目指しています。
  • 2020年3月期のスコープ1、2のGHG排出量は1,200t-CO2、スコープ3は28,167t-CO2でした。

人権尊重への取組み

  • 人権方針を策定し、グループ全体で人権尊重の取り組みを推進。人権デューデリジェンスを実施し、問題が確認された場合は是正措置を講じます。

コーポレート・ガバナンス

  • 取締役会は、経営戦略や重要事項を審議し、執行役員の業務執行状況を監督します。独立社外取締役を複数名選任し、透明性と公正性を確保しています。

監査の状況

  • 監査役会を中心に、内部監査と会計監査が行われ、経営監視機能の客観性と中立性が確保されています。

このように、株式会社日本エム・ディ・エムは気候変動や人権問題に対して積極的に取り組んでおり、サステナビリティを経営の重要課題として位置付けています。

株式会社日本エム・ディ・エム有価証券報告書に基づいて、配当履歴や配当政策、配当性向、将来の配当予想、配当利回りについて評価します。

配当履歴

  • 当事業年度の配当: 1株当たり14円
  • 配当の総額: 370,444千円
  • 配当の決定機関: 中間配当は取締役会、期末配当は株主総会で決定される。

配当政策

  • 基本方針: 年2回の配当(中間配当と期末配当)を行う方針。
  • 利益還元の方針: 利益還元は柔軟に行う方針であり、内部留保資金は新製品の開発や国際的マーケティング力の向上に重点的に投資する。

配当性向

配当性向は、当期純利益に対する配当金の割合を示します。以下の計算を行います。

  • 当期純利益: 1,271百万円(1,271,000千円)
  • 配当金の総額: 370,444千円
配当性向 = 配当金の総額 / 当期純利益 × 100
配当性向 = 370,444 / 1,271,000 × 100 ≈ 29.1%

結論

  • 配当政策: 年2回の配当を基本とし、利益還元を柔軟に行う方針。
  • 配当性向: 約29.1%であり、安定した配当を維持している。
  • 将来の配当予想: 新製品開発への投資が配当の増加に寄与する可能性がある。

過去のデータを参照することで、より詳細なトレンド分析が可能です。