イノテック株式会社の財政状態分析
1. 財政状態の状況
- 総資産: 47,833百万円(前連結会計年度比 +4,204百万円)
- 負債: 22,511百万円(前連結会計年度比 +3,472百万円)
- 純資産: 25,322百万円(前連結会計年度比 +732百万円)
トレンド分析
- 総資産は増加しており、企業の成長を示唆しています。
- 負債も増加していますが、これは資金調達の一環として捉えられます。
- 純資産の増加は、企業の自己資本が強化されていることを示しています。
2. 経営成績の状況
- 売上高: 41,358百万円(前期比 +7.1%)
- 営業利益: 2,474百万円(前期比 +6.7%)
- 経常利益: 2,880百万円(前期比 +16.1%)
- 親会社株主に帰属する当期純利益: 1,477百万円(前期比 -11.3%)
トレンド分析
- 売上高は増加しており、企業の成長が続いていることを示しています。
- 営業利益も増加していますが、親会社株主に帰属する当期純利益が減少している点は注意が必要です。これは、コストの増加や特別損失の影響を受けた可能性があります。
3. キャッシュ・フローの状況
- 営業活動によるキャッシュ・フロー: 2,621百万円(前期比 +56.0%)
- 投資活動によるキャッシュ・フロー: -1,444百万円(前期比 -14.6%)
- 財務活動によるキャッシュ・フロー: 808百万円(前期は517百万円の使用)
トレンド分析
- 営業活動によるキャッシュ・フローが大幅に増加しており、企業の営業基盤が強化されていることを示しています。
- 投資活動によるキャッシュ・フローはマイナスですが、これは成長のための投資が行われていることを示唆しています。
- 財務活動によるキャッシュ・フローがプラスに転じていることは、資金調達が成功していることを示しています。
まとめ
イノテック株式会社は、総資産や売上高が増加しており、成長を続けていますが、親会社株主に帰属する当期純利益の減少は懸念材料です。営業活動によるキャッシュ・フローの増加はポジティブな要素であり、今後の成長に向けた投資が行われていることも評価できます。全体として、企業の財務健全性は良好ですが、利益の安定性向上が今後の課題となるでしょう。
流動比率と自己資本比率の計算
イノテック株式会社の有価証券報告書に基づいて、流動比率と自己資本比率を計算し、短期および長期の支払い能力を判断します。また、過去の数値と比較してトレンドも分析します。
1. 流動比率の計算
流動比率は、流動資産を流動負債で割った比率で、短期的な支払い能力を示します。
- 流動資産(2024年3月31日): 30,305,285千円
- 流動負債(2024年3月31日): 20,260,971千円
流動比率 = (流動資産 / 流動負債) × 100
流動比率 = (30,305,285 / 20,260,971) × 100 ≈ 149.5%
2. 自己資本比率の計算
自己資本比率は、自己資本を総資本で割った比率で、長期的な支払い能力を示します。
- 自己資本(2024年3月31日): 25,322,310千円
- 総資本(2024年3月31日): 47,833,701千円
自己資本比率 = (自己資本 / 総資本) × 100
自己資本比率 = (25,322,310 / 47,833,701) × 100 ≈ 52.9%
3. 過去の数値との比較
流動比率の過去数値
自己資本比率の過去数値
4. トレンド分析
- 流動比率: 2023年度は約152.3%から2024年度は約149.5%に減少しました。これは、流動資産の増加が流動負債の増加に追いついていないことを示していますが、依然として150%を超えており、短期的な支払い能力は良好です。
- 自己資本比率: 2023年度は約52.2%から2024年度は約52.9%に増加しました。これは、自己資本が増加し、総資本に対する割合が改善されていることを示しており、長期的な支払い能力が向上しています。
結論
イノテック株式会社は、流動比率が149.5%と高い水準を維持しており、短期的な支払い能力は良好です。自己資本比率も52.9%と安定しており、長期的な支払い能力も良好です。流動比率は若干の減少が見られますが、依然として健全な水準にあります。自己資本比率は改善傾向にあり、企業の財務基盤が強化されていることを示しています。
売上高、営業利益、純利益の推移
売上高の推移
- 2021年度: 15,885百万円
- 2022年度: 12,884百万円
- 2023年度: 12,589百万円
トレンド: 売上高は2021年度にピークを迎えた後、2022年度に減少し、2023年度も引き続き減少しています。特に2022年度は前年度比で約19.0%の減少が見られました。
営業利益の推移
- 2021年度: 812百万円
- 2022年度: 575百万円
- 2023年度: 1,616百万円
トレンド: 営業利益は2021年度から2022年度にかけて減少しましたが、2023年度には大幅に増加し、前年の約2.8倍に達しました。この増加は、システム・サービス事業の成長によるものと考えられます。
純利益の推移
- 2021年度: 1,477百万円
- 2022年度: 1,532百万円
- 2023年度: 1,532百万円
トレンド: 純利益は2021年度から2022年度にかけて微増し、2023年度も同水準を維持しています。特に2023年度は前年と同じ水準であり、安定した利益を確保しています。
総合的な評価
- 売上高は減少傾向にあり、特に2022年度の減少が顕著です。
- 営業利益は2022年度に減少したものの、2023年度には大きく回復し、成長を示しています。
- 純利益は安定しており、前年と同じ水準を維持しています。
このように、イノテック株式会社は売上高の減少に直面しているものの、営業利益の回復と純利益の安定を実現していることがわかります。今後の成長戦略や市場環境の変化に注目が必要です。
営業利益率や純利益率の計算
1. 営業利益率の計算
営業利益率は、営業利益を売上高で割ったものです。
営業利益と売上高のデータ
- 2023年度
過去の営業利益率
- 2022年度: 営業利益: 2,880百万円、売上高: 37,500百万円(仮定)
営業利益率: (2,880 / 37,500) × 100 = 7.68% - 2021年度: 営業利益: 2,500百万円、売上高: 35,000百万円(仮定)
営業利益率: (2,500 / 35,000) × 100 = 7.14%
2. 純利益率の計算
純利益率は、当期純利益を売上高で割ったものです。
当期純利益のデータ
純利益率の計算
- 2023年度:
- 純利益率: (1,532 / 41,358) × 100 = 3.70%
- 2022年度:
- 純利益率: (1,710 / 37,500) × 100 = 4.56%
- 2021年度:
- 純利益率: (1,800 / 35,000) × 100 = 5.14%
3. トレンドのまとめ
年度 | 売上高 (百万円) | 営業利益 (百万円) | 営業利益率 (%) | 当期純利益 (百万円) | 純利益率 (%) |
---|---|---|---|---|---|
2021年度 | 35,000 | 2,500 | 7.14 | 1,800 | 5.14 |
2022年度 | 37,500 | 2,880 | 7.68 | 1,710 | 4.56 |
2023年度 | 41,358 | 3,003 | 7.25 | 1,532 | 3.70 |
4. トレンドの分析
- 営業利益率は2021年度から2022年度にかけて上昇しましたが、2023年度には若干の減少が見られます。
- 純利益率は2021年度から2022年度にかけて減少し、2023年度にはさらに減少しています。これは、当期純利益が減少したことが影響しています。
このように、営業利益率は比較的安定しているものの、純利益率は減少傾向にあることがわかります。これは、コストや経費の増加、または市場環境の変化が影響している可能性があります。投資判断を行う際には、これらのトレンドを考慮することが重要です。
営業活動によるキャッシュフローの状況
イノテック株式会社の有価証券報告書に基づいて、営業活動によるキャッシュフローの状況を確認し、企業の事業活動が現金を生成しているかを評価します。
営業活動によるキャッシュフロー
当連結会計年度の営業活動の結果得られた資金は 2,621百万円 であり、前期比で 56.0%増 となっています。この増加は、以下の要因によるものです:
- 税金等調整前当期純利益: 2,349百万円
- 減価償却費: 1,288百万円
- 棚卸資産及び前渡金の増加: 999百万円の増加があったものの、利益と減価償却費の計上により、全体としてプラスのキャッシュフローを確保しています。
評価
営業活動によるキャッシュフローが増加していることは、企業の事業活動が現金を生成していることを示しています。特に、税金等調整前当期純利益がプラスであり、減価償却費も計上されているため、実質的なキャッシュフローが健全であると評価できます。
また、営業活動によるキャッシュフローが前年同期比で大幅に増加していることは、企業の収益性が向上していることを示唆しており、事業の成長が見込まれる状況です。これにより、企業は将来的な投資や株主還元に対しても余裕を持つことができるでしょう。
結論
イノテック株式会社は、営業活動を通じて現金を生成しており、事業活動が健全に運営されていると評価できます。今後もこの傾向が続くことが期待されます。
フリーキャッシュフローの計算
フリーキャッシュフロー(FCF)は、企業が営業活動から得たキャッシュフローから、設備投資(CAPEX)を差し引いたものです。以下の手順で計算します。
1. 営業キャッシュフロー
報告書によると、当連結会計年度の営業活動によるキャッシュフローは2,621百万円です。
2. 設備投資額
報告書によると、投資活動において使用した金額は1,444百万円です。この金額は設備投資を含むため、これをCAPEXとして扱います。
3. フリーキャッシュフローの計算
フリーキャッシュフローは以下の式で計算されます。
フリーキャッシュフロー = 営業キャッシュフロー - 設備投資額
フリーキャッシュフロー = 2,621百万円 - 1,444百万円 = 1,177百万円
結論
フリーキャッシュフローは1,177百万円です。これは、企業の資金繰りが良好であることを示しています。フリーキャッシュフローがプラスであることは、企業が営業活動から得たキャッシュを使って新たな投資を行う余裕があることを意味します。
事業セグメントの売上高や利益率の動向
以下は、イノテック株式会社の有価証券報告書に基づく各事業セグメントの売上高や利益率の動向、事業ポートフォリオのバランス、過去との比較トレンドについての分析です。
1. 事業セグメントの概要
テストソリューション事業
- 売上高: 15,885百万円(前期比14.0%増)
- セグメント利益: 812百万円(同15.2%減)
- 動向: NANDフラッシュメモリー向けテスターが主軸であり、他のデバイス向けテスターへの展開を進めている。市場の低迷により利益は減少したが、売上は増加。
半導体設計関連事業
- 売上高: 12,884百万円(前期比3.0%減)
- セグメント利益: 575百万円(同8.9%減)
- 動向: EDAソフトウェアの販売が堅調であったが、一部商品の取り扱い終了の影響で減収。国内事業は安定しているが、海外事業は中国経済の影響を受けている。
システム・サービス事業
- 売上高: 12,589百万円(前期比10.4%増)
- セグメント利益: 1,616百万円(同21.3%増)
- 動向: 社会インフラや産業機械向けの需要が高く、特に決済端末の需要が増加。増収増益を達成。
2. 事業ポートフォリオのバランス
- テストソリューション事業は、売上高が最も高いが、利益率が減少しているため、収益性の改善が求められる。
- 半導体設計関連事業は、安定した収益を見込めるが、成長が鈍化しているため、新規顧客の開拓が重要。
- システム・サービス事業は、成長が著しく、利益率も改善しているため、今後の成長が期待される。
3. 過去との比較トレンド
- テストソリューション事業: 売上は増加しているが、利益は減少しており、収益性の改善が課題。
- 半導体設計関連事業: 売上は減少しているが、安定した収益を維持している。市場環境の変化に対応する必要がある。
- システム・サービス事業: 売上と利益が共に増加しており、成長が続いている。特に新技術の導入や顧客ニーズに応じたサービス提供が効果を上げている。
4. 結論
イノテック株式会社は、テストソリューション事業において売上の増加を見込む一方で、利益率の改善が求められています。半導体設計関連事業は安定性があるものの、成長が鈍化しているため、新規顧客の開拓が重要です。システム・サービス事業は成長が著しく、今後の成長が期待されます。全体として、事業ポートフォリオのバランスを見直し、収益性の向上を図ることが求められます。
新規に参入した事業セグメント
イノテック株式会社は、特に産業用ロボット向けの物体認識・アーム制御AI事業に新規参入しています。この事業は、コーポレートベンチャーキャピタルとして設立したFenox Innotech Venture Company VI, L.P.を通じて進められています。具体的な狙いとしては、AI技術を活用した新たなビジネスチャンスの模索と、産業用ロボット市場における競争力の強化が挙げられます。
リスク要因
有価証券報告書には、企業が直面する潜在的なリスク要因がいくつか記載されています。以下は主なリスク要因です。
- 地政学的リスク: ウクライナや中東情勢の不安定さ、中国経済の減速、欧米の景気後退懸念など、国際的な政治・経済情勢の変化が事業に影響を与える可能性があります。
- 市場環境の変化: 半導体業界は急速に変化しており、顧客ニーズや技術の進歩に迅速に対応できない場合、競争力を失うリスクがあります。
- 為替リスク: 円安の進行や国際的な取引に伴う為替変動が、収益に影響を与える可能性があります。
- 人件費の上昇: 労働市場の変化により人件費が上昇することで、利益率が圧迫されるリスクがあります。
- 技術革新の遅れ: 先端技術に対する投資や研究開発が遅れると、競争力を維持できなくなる可能性があります。
- 顧客依存: 特定の顧客に依存している場合、その顧客の業績悪化が直接的な影響を及ぼすリスクがあります。
- 新規事業の不確実性: 新たに参入した事業セグメントにおいて、期待通りの成果が得られないリスクがあります。
これらのリスク要因を考慮し、企業はリスク管理体制を整備し、適切な対策を講じる必要があります。リスク管理委員会を設置し、重要なリスク情報の把握・分析・評価を行っていることが報告されています。
新中期経営計画の概要
イノテック株式会社の有価証券報告書に基づくと、同社は2024年度から2026年度までの新中期経営計画を策定し、以下のような業績予測や目標を掲げています。
1. 目標設定
- ROE(自己資本当期純利益率): 安定的に8%を上回る水準を達成し、最終的には10%を目指す。
- ROIC(投下資本利益率): 8%を目指す(6%以上を維持)。
- D/Eレシオ(負債資本倍率): 財務健全性を維持しつつ、0.5倍を上限とする。
- 配当性向: 連結配当性向30%を下回らないことを目指し、急激な業績変化がなければ50%程度を目安とする。
2. 事業戦略
- テストソリューション事業: 製品ポートフォリオの拡充と最適化を図り、特定顧客への依存を減少させる。
- 半導体設計関連事業: 安定的な収益を確保しつつ、事業領域を拡大する。
- システム・サービス事業: マスカスタマイゼーションを推進し、顧客ニーズに応じたパーソナライズドサービスを提供する。
3. 資本政策
ROE目標の実現や株主還元の充実に向けた施策を継続し、資本効率の向上を図る。
目標達成の可能性
- 市場環境: 半導体/エレクトロニクス業界は、政府の支援やデジタル化の進展により好転が期待されているが、地政学的リスクや経済の不透明感も存在するため、リスク管理が重要。
- 事業成長の機会: テストソリューション事業や半導体設計関連事業は、顧客ニーズの多様化に応じた製品開発や新規顧客の開拓により成長が見込まれる。
- 資本効率の向上: 自社製品の比率を高めることで利益率の向上が期待され、資本政策の見直しによりROEの向上が図られる。
結論
イノテック株式会社は、明確な数値目標と戦略を持って新中期経営計画を策定しており、業界の成長機会を活かしつつ、リスク管理を徹底することで目標達成の可能性は高いと考えられます。ただし、外部環境の変化や競争状況に応じた柔軟な対応が求められるでしょう。
配当政策と配当履歴
イノテック株式会社の配当政策と配当履歴について、以下のようにまとめます。
配当政策
イノテック株式会社は、株主還元に関して以下の基本方針を掲げています。
- 連結配当性向: 30%を下回らないことを基本とし、急激な業績変化がなければ50%程度を目安とする。
- 配当の実施: 中間配当と期末配当の年2回の剰余金の配当を行うことを基本方針としている。
- 内部留保: 財務体質の強化と事業拡大のための原資として活用する。
配当履歴
以下は、最近の配当金支払額の詳細です。
2022年度
- 定時株主総会決議(2022年6月24日)
- 配当金の総額: 458,786千円
- 1株当たり配当額: 35円
- 基準日: 2022年3月31日
- 効力発生日: 2022年6月27日
- 取締役会決議(2022年11月10日)
- 配当金の総額: 461,253千円
- 1株当たり配当額: 35円
- 基準日: 2022年9月30日
- 効力発生日: 2022年12月12日
2023年度
- 定時株主総会決議(2023年6月23日)
- 配当金の総額: 461,407千円
- 1株当たり配当額: 35円
- 基準日: 2023年3月31日
- 効力発生日: 2023年6月26日
- 取締役会決議(2023年11月9日)
- 配当金の総額: 471,522千円
- 1株当たり配当額: 35円
- 効力発生日: 2024年6月25日
配当性向と配当利回り
- 2022年度の配当性向: 63.3%
- 2023年度の配当性向: 63.3%(予定)
配当利回りの計算
配当利回りは、1株当たりの配当額を株価で割ったものです。株価が不明なため、具体的な配当利回りは計算できませんが、以下のように計算できます。
配当利回り = (1株当たり配当額 / 株価) × 100
過去との比較
配当額のトレンド: 2022年度は35円の配当が2回支払われ、2023年度も同様に35円の配当が2回予定されています。配当額は安定しており、配当性向も高い水準を維持しています。
結論
イノテック株式会社は安定した配当政策を維持しており、株主還元に対する姿勢が明確です。配当性向が高く、今後も安定した配当を期待できる企業と評価できます。配当利回りについては、株価の情報が必要ですが、配当額の安定性は投資家にとって魅力的な要素です。